バカップル誕生秘話

私の好きな人には好きな人がいる。
多分。

今も楽しそうに話してる。
私はそれを眺めて羨ましがることしか出来ない。

『あーもう無理死にたい』
「じゃあ死ねや」
『かっちゃん酷い』
「かっちゃん言うな死ね」

幼馴染の勝己と出久には知られている。
言わずともバレたのは好きな人への態度がわかりやすいから、だそうだ。
そして勝己には趣味悪ぃとまで言われた。
いや一応あんたの友達だよね。酷くない?

「だから頼むってー!」
「上鳴まじで黙って」

曲を真剣に聞こうとする耳郎ちゃんの邪魔をしている彼が私の好きな人。
もちろん耳郎ちゃんも好きだけど正直ここまで来ると嫉妬しまくる。

『私もああいうかっこよくて可愛い女子目指したらいい?』
「ハッ。陽向には無理だろ」

あぁ酷い。少しくらい慰めろや。
ムカついて勝己の頭をわしゃわしゃしていると彼と目が合う。
彼は驚いた顔をした後に笑いかけてくれたが私は余裕なんてなくて目をそらす。

『もうやだ…まじで死ぬ』
「殺してやろうか」

しゃがみこむと髪の毛がボサボサになってめちゃくちゃ怖い顔の勝己と目が合う。

『出久ヘルプ!』
「わ、陽向ちゃんまたやったの?」

そう言って教室の後ろの方で駄弁っていた出久の後ろに隠れる。

「おいデク。陽向寄越せや」
『出久本当に助けて殺される。』
「ギャハハ、爆豪髪やべぇ」

出久の後ろに隠れていると大好きな人の笑い声が響く。
笑ったあとにやばいと口を押さえる姿も可愛いもんだ。
今度は彼が追いかけられる番。
これが割と日常だったりする。

私と彼の接点なんて勝己くらいしかない。

ふぅ、とため息をつくと何となく察しているだろう梅雨ちゃんに頭を撫でられる。
優しさで泣いちゃうわ。



その日も変わらずいつも通り。
授業が終わって寮に帰る。
いつも通り出久の隣でご飯を食べて、勝己に怒鳴られながら課題をやって、出久に慰めてもらってから女子みんなでお風呂に入る。

ただ一つ違うのは今この状況。
隣には切島くんが座っていて、目の前には彼と瀬呂くん。
手にはトランプ。

先程まで私の場所には勝己が居たがまだお風呂に入ってなかったらしく、私に代われとトランプを渡してお風呂に行ってしまった。

「はい次涼風さんの番」

そう言ってこちらに向けられたトランプ。
その奥にいる上鳴くんと目が合う。
正直無理。
どっちを取るか決められるほど余裕ない。
その姿を見て悩んでると思ったのか1枚だけ上に出す上鳴くん。
ニッと笑う上鳴くんに心臓が出てきそうになりその1枚を取って目をそらす。

ハートのA。
私が持ってるスペードのAと合わせて山に置く。

私が持ってるのはあと1枚。
隣の切島くんが引いて上がりだ。

『上がり、』
「涼風さん強ぇな!見てこれ」

切島くんが上がった私に手持ちを見せてくるので覗きこむと3枚のトランプとジョーカー。
この残りでジョーカー持ってるのはさすがに負けるでしょ、と思い笑うと、瀬呂くんが絶対お前ジョーカー持ってるじゃんと騒ぎ出す。

「涼風さんのせいでバレたじゃん!」
『ごめんごめん』

責められてもバレバレな切島くんに笑いが止まらない。
あーおかしい、と言って顔を上げると上鳴くんと目が合う。
吸い込まれそうなくらい真っ直ぐこっちを見ていて、いつもみたいにそらせない。

「おい上鳴次お前」
「あ、あぁ」
「悩んだところでお前1枚しか持ってないから揃わないでしょ!」
「よっしゃ上がり!」
「はぁ?!イカサマだー!」

瀬呂くんに呼ばれてそらされた目。
何もなきゃずっと見ていた気がする。

「負けた方がジュース奢りな。」
「んだよ先に抜けたからってー、」
「涼風さん、ジュース先に決めに行こ」

上鳴くんの提案で最下位はジュースを奢ることになった。
が、最後のお誘いで手を握られてそのまま自販機まで一緒に行くことになる。

「上鳴じゃん。何やってんの?」

耳郎ちゃんだ。勘違いされてしまう。
そう思い手を離そうとするが彼は離す気がないらしい。

「ババ抜きやってて最下位がジュース奢んの。俺と涼風さんは1位と2位。」
「へーえ。なに今切島と瀬呂がやってんの?」
「そうそう。」
「次ウチも入れてもらお」

楽しそうに会話する二人。
ここに私いる必要あるのかな、なんて。
去り際に上鳴くんに耳打ちして去っていく耳郎ちゃん。
あぁ、やっぱり二人はお似合いだよ。
私にも後で一緒にやろうね、と笑って去っていく。
うん、と答えたけど、ちゃんと笑えてたかな。

自販機につくと手がパッと離される。
あぁ、寂しいな、なんて思って上鳴くんを見上げれば目が合ってしまう。

「はぁー、そういう顔されると勘違いするんだけど」
『え?』
「俺のこと嫌いなのかなって思ってたけど、今手離したら寂しそうな顔すっからもうワケわかんねぇ…」

そう言ってしゃがみこんでしまう上鳴くん。

『嫌い、じゃないよ』
「まじ?」

私がそう口にすると嬉しそうな顔で立ち上がる。
そういうところも好き、なんて思っているとみるみるうちに顔が赤くなる上鳴くん。

『え?』
「好きって」
『え、あ、へ?!口に出てた?!』

やばい、と思って口を押えてももう遅くて泣きたくなる。
脈ナシ相手になんで告白してんだ私。

「今の、ほんと?」
『え、と』
「俺、嫌われてると思っててさ。正直どうやって仲良くなっていいかも分かんねぇし、いつも爆豪とか緑谷といるから…」
『幼馴染だから…』
「で、気づいたら好きになってたわ」

『は、え?』

真っ直ぐに私を見て笑う彼は冗談なんて言っているようには見えなくて、顔に熱が集まる。

「だから、俺と付き合ってください!」

そう言って頭を下げてこちらに手を差し出す上鳴くん。
断る理由は何も無い。
彼の手を握るとしゃー!と言って私をそのまま抱きしめる。

『ちょ、上鳴く、』
「遅せぇわ」
「悪ぃ爆豪!」
「だからさっさと告りゃいいっつったろうが死ね」

後ろから現れた勝己は何もかも知っていたようでふっと笑って去っていく。

『上鳴くんも勝己に、』
「待ってそれ嫌だわ。」
『え?』
「爆豪は名前なのに俺苗字なの死ぬほど嫌だ」
『で、電気くん』
「陽向ちゃんまじで好き」

人の話を聞く気配のない電気くんに抱きしめられたまま、いつの間にか戻ってきていた耳郎ちゃんと目が合う。

「耳郎まじでサンキューな!」
「爆豪に同意」
『え、ま、耳郎ちゃんも知ってたの?』
「こいつしつこいんだよ。涼風の好きな物教えろとか俺嫌われてんのかなとか。」

その言葉に思わず頬が緩む。






雄英一のバカップルの誕生かな。



上(バカップル!いいねそれ俺なりたいわ)
耳(あんたならそうなるでしょうね。)
上(俺絶対陽向ちゃんから離れないわ)
耳(いやそろそろ離してあげないとたぶん)
(く、くるしい…)
瀬(なんだなんだ?て、やっと告ったのか!)
切(上鳴男らしいぜ!)
瀬(てことでジュースお前の奢りな)
瀬(俺ファンタ)
切(俺サイダー)
耳(ウチコーラ。涼風も一緒にやろ)
上(俺の彼女を連れてくなー!)
耳(うるさい早くジュース買ってこい)
(わ、私もコーラ!)
上(はーい!)

(((単純)))