私だけに、なんてね。


『好きだよばくごーくん』
「死ね」
『酷いなぁ』

何十回目の告白も玉砕。
それにしても死ねって酷いなぁ、本当に死んだら悲しんでくれるかな、なんてふざけたことを思ったりする。

「涼風は毎日飽きねえな」
「もういっその事俺にしちゃえば?」
『寝言は寝て言え』

眉を下げて笑う切島にふざけたことを抜かす上鳴。
ムカついたので上鳴のおでこを勢いよく叩いてその場を去る。
いってぇと文句を言っていたがそこは気にする必要もないだろう。

「メンタル強いね」
『それしか取り柄ないからね』
「恋する乙女は強くなるのね」

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは私のことを全力で応援してくれている二人。
いや正直多分クラス中が協力してくれている。




それもこれも入学直後の出来事。
その日は私が日直で上の方を消すのに困っていると、後ろから来た彼が無言で私から黒板消しを奪って消してくれたことから始まった。

『え、好き』
「ア?」

思わず口をついて出た言葉。
自分でも知らないうちに口から出ていたので焦って口を押える。
爆豪はそんな告白も気にせずフッと鼻で笑って席に着いた。

『え、なにそれマジで好き』

そうここから始まった。

ことある事に好き好き言っていればいつか私のことを好きだと勘違いしてくれるんじゃないか、なんて。




『ねぇ爆豪』
「離れろや死ねストーカー女」
『え、ひどい』

休み時間、一人でいる爆豪に後ろから抱きつく。
許可は出てないが無理やり逃げようともしないので基本このスタイルで捕まえている。

横で峰田が、オイラもとかやかましいが放っておく。

『あ、ここ難しいよね』
「ア?こんなん簡単だろガキでも解けるわ」
『え、じゃあ教えてよ』
「ヤダ」

爆豪が開いているのは今日出された課題。
私が苦戦した問題を指さすと彼はバカにしたように笑う。

あぁ、その顔も好きだなぁなんて見惚れていると机に影ができる。
爆豪とほぼ同時に顔を上げるとそこに居たのはクラス一イケメンの轟。

『お?』
「涼風、分からないなら俺が教えて」
「いきなり出てきてんじゃねェよ半分野郎が。俺が教え殺すからいらねェわ死ね」
「そうか」

どうやら先程の会話を聞いていたようで教えてくれようとしてたみたい。
ナイスアシスト轟。
爆豪が勉強教えてくれることになったよ!
まじで死ぬほど嬉しい!
もう死んでもいい!



放課後、いつもは私から行くのだが今日は勉強を教えてくれるって事で爆豪から私の前の席に来てくれた。
なにこれ嬉しすぎる。

「そしたらそこを…だから違ぇよ!なんでそこでそれが出てくンだよクソが」
『だってここからここに来て…』
「まず大前提が違うわ」

クラスにはまだちらほら人が残っていて私たちのやり取りを見て爆笑してる上鳴も目に入る。
あいつは後でしめる。
うん。てかお前は笑ってないで勉強しろ。

「だから…」

横を向いていた爆豪がこちらに向き直す。
と同時に膝同士がぶつかる。
触れたところから徐々に熱を帯びて、爆豪の話が入ってこない。

「聞いてんのか」
『き、聞いてます!聞いてます!』

爆豪は知ってか知らずか膝同士が触れたままで足を移動させる気配もない。
こんなの聞けるわけないだろう、とブチ切れそうだけどそんなことしたら殺されるので黙っておく。

集中、集中、と心に唱えて、目の前の課題に向き合う。


怒られながらも何とか終わった課題。
気づけばみんなもう帰っていて廊下からはどこかのクラスの人の笑い声だけが聞こえる。
ふぅと伸びをすると爆豪と目が合う。
と、同時に未だに膝同士が当たってることに気が付き一気に顔に熱が集まる。

「林檎かよ」

フッと笑う爆豪にさらに心を掴まれたのは言うまでもないだろう。







私以外に見せないでね、なんて



(何をだよ)
(あぁ無自覚無理死ね)
(ア?!テメェが死ねやクソが)
(よし帰ろう)
(なんか奢れや)
(え、それって放課後デートってこと?)
(違ぇわ誰がテメェとデートすんだよ)
(まぁいいけどね。)