爆弾投下


「涼風」
『あら轟だ、おはよ』

雄英に一番近いコンビニに寄り飲み物を買って出たところで轟と出くわす。

『轟もコンビニに用事?』
「いや」
『一緒に学校行く?』
「あぁ」

みんながイケメンイケメン言うけど正直私には子犬にしか見えない。
何故か懐かれていて可愛いのでそのまま放っておいている。

ちらほらと雄英の制服が目に入り、だいぶ視線を感じる。
そりゃそうだ、学校一のイケメンが真横を歩いているんだから。
それにしてもこの子距離感バグってんな。
体が触れるか触れないか、そのレベルの距離で横を歩く轟。
もう益々犬にしか見えん。

『最近どう?』
「どうって?」
『んー勉強とか友達とか』

なんてお母さんみたいな発言だぞ自分。
私の質問に考え込む轟。
いや、そんなに真剣に考えなくてもただの雑談やで。

「緑谷は優しい」
『そうだね、緑谷優しいよね』
「八百万は話しやすい」
『ヤオモモね、いい子だよね』
「涼風は可愛い」
『うんうん、え?!』

まるで弟がいるみたいだと話に相槌を打っていると唐突の爆弾発言。
轟の顔を見れば、どうした?とでも言うような表情をしている。

『か、可愛い?』
「あぁ。」
『そ、っかぁ…それは…ありがとう』

何も表情を変えないもんだから正直何を思っているのかわからない。
可愛い?私が?どういうことだ。
私が轟を犬だなぁと感じるのと同じものか?
あぁ、きっとそうだ。
よく猫っぽいって言われるし、猫って思われてんだろうなと自己完結する。

もう少しで雄英に着くところでちらほらと知った顔。
ちょっと先にお茶子ちゃん達が見える。

『あ、緑谷達いるよ。行こ!』

そう言って走ろうとすると腕を掴まれる。

『轟?』
「二人で話したい」
『へ?』
「涼風と二人がいい」
『大人数、が嫌みたいな?』
「そうじゃない。」

どうしても他の人が嫌みたいなので理由を聞くのを諦め轟と二人で歩く。
轟は謎に腕を離してくれないのでとりあえずそのままにして教室につく。

「え、え?!どういうこと?!」

轟に腕を引かれたまま教室に入ったので既に教室にいる何人かがめちゃくちゃ驚いてた。
いや、私にも分からないから聞かないでくれ。
と同時に爆豪の方を見れば真顔で目をそらされた。
いや興味無いのは知ってるけど少しくらい興味持ってよー。

漸く腕を離してくれた轟を置いて自分の席に鞄を置いて爆豪の元へと行く。

『ばっくごーくん』
「うるせェ死ね」
『今日も好き』

はい、ガン無視。
うんもうそれでもいいよ大好きだからちょっとでも会話できるだけ嬉しいよ。
だがその日はそれ以降会話できなかった。
それもこれも今真横に座る轟のせい。

『轟の班あっちだよ』
「尾白が交換してくれた」
『あ、あぁ、そう…』

物理の実験の授業で謎に私の隣を陣取る轟。
同じ班の切島と三奈ちゃんも苦笑いしている。

私が水を汲みに行けば私のあとをついてきて水を汲んだバケツを代わりに持ってくれたり、集めたノートを運ぼうとすれば半分以上持ってくれたり。
何なの、おばあちゃんじゃないよ。

爆豪と言えば私が話しかけなくても切島達と楽しそうに話していて気に食わない。

「涼風」
『ん?』
「好きってなんだ」

散々着いて回られてやっと放課後、爆豪に話しかけようとしたところで轟に道を塞がれる。

『え…』
「お前、爆豪のこと好きっていつも言ってるから」
『好き、っていうのは…その人のこと考えて胸がギューってなったり、嬉しかったり、悲しかったり、その人のために何かしたいって思ったり…笑ってるとこずっと見てたいな、みたいな…』
「そうか。」

私の曖昧な答えに少し考え込んで、轟が出した次の言葉に教室が揺れた。

「涼風、お前が好きだ」
『は、』

真っ直ぐに射抜く轟の目に嘘はなくて、目を逸らせなくなる。
みんながこちらを見ているのは周りを見なくてもわかる。
真剣な轟の目とみんなに見られている羞恥心とで顔に熱が集まる。

「爆豪じゃなくて俺の事を好きになってほしい」

ガタンと勢いよく誰かが立ち上がった。
見なくてもわかる。
爆豪だ。
彼はこちらに見向きもしないで教室から出ていく。

『ばくご、』
「俺を見ててほしい」

出ていく爆豪を追おうとすると朝と同じ、轟に腕を掴まれる。
そんな真剣に想いを伝えられたら、はい、と答えるしかなくて、それを聞くと彼は満足そうに帰っていく。

心配したお茶子ちゃん達が私の元へ来てくれるが正直まともに会話ができない。







あーあ、鳥になりたい。



麗(それにしても大胆やね…)
蛙(轟ちゃんは宣戦布告をしたかったんじゃないかしら)
耳(爆豪に?)
八(修羅場ってやつですわね!)
(ヤオモモ楽しまないで…)
芦(明日からがド修羅場だよ!)
葉(ドラマ撮れちゃうね!)

(てか宣戦布告って、爆豪に関しては私の片想いなんだが)
(でも教室を出ていく爆豪がイラついてたのは)
(ちょっと期待しちゃったりする)