「やっぱり轟だよねー」
「そりゃイケメンだけどさ」

ヒーロー基礎学の授業終わり、それぞれ着替えながら雑談をする。

「ねぇ陽向ちゃんは誰がかっこいいと思う?」

1人で静かに着替えていると不意に声がかかり動きを止める。

『別に、誰も…』

声をかけてきた芦戸さんは私の返答を聞くと、えーなんて項垂れていたが私には知ったこっちゃない。
チラ、と芦戸さんの横に目をやると困ったように眉を下げて笑ってごめんね、なんて口パクで謝る彼女と目が合う。

「そういや駅前に新しいクレープ屋出来たんだって」
「え?!まじ?!行きたーい!ねぇみんなで行こー!」
「いいわね。行きましょう」
「友達と学校帰りに寄り道なんて憧れでしたわ!」

みんなが盛り上がってる中、私は1人更衣室の扉を開けて外に出る。
1人で廊下を歩いているとパタパタと走る足音が聞こえて思わず振り返る。

「さっきはごめんね。芦戸も悪気あったわけじゃないからさ。」
『別に、気にしてない』
「そっか。なら良かった。あ、今日クレープ一緒に行かない?」
『私はいい』
「甘いものあんま好きじゃないの?」
『好きでも嫌いでもない』

私が好きなのは…
横に並んでこちらの様子を伺う彼女と目が合う。

『耳郎さんさ』
「なに?」
『私に、あんまり話しかけないで』

この想いが知られてしまえばきっとまた…



―――
「涼風ってさ、女好きなの?」
『だったら、なに?』
「きもー」
「ウチらのこともそういう目で見てたの?」

私だって、誰でも好きになるわけじゃない。
その時たまたま好きだった子が女の子だっただけだ。

―――



「迷惑だった?」

少しだけ悲しそうな顔の彼女と目が合う。

『迷惑じゃ、なくて』

息が詰まりそうだ。
彼女にこんな顔をして欲しいわけじゃない。

『ごめん、』

そう言ってそこから逃げ出した。

休日を挟むので彼女とは顔を合わさなくて済む。
1人ぼーっと天井を眺めていると家のチャイムが鳴る。

『はーい』

実家からの仕送りだろうか、なんて玄関を開けるとクラスメイトが1人。

『梅雨ちゃん』
「話したいことがあったの。」

そう言って真っ直ぐ私を見つめる彼女を家に招き入れる。

『麦茶くらいしかなくて…』
「構わなくていいわ。ちゃんと、お話がしたいの。」

麦茶を置くと、また真剣な眼差しを向けてくるので彼女の前に座る。

「こんなまだ仲良くなって数ヶ月の私に言われたくないかもしれないけど、私は貴方を1人にしたくないのよ。」
『なに、が?』

彼女はわかってる、と言うような目をしていた。

「悩んでるのでしょう?」
『悩んでなんか』
「私たちを避けてるわ」
『そんな事ない』
「だったら、何で1人でいることを選ぶの?」

いつもとは違う少し低めの彼女の声に唾を飲み込む。

『私は、1人でいた方がいいから』
「それは、響香ちゃんの事が好き、だからかしら」

彼女の言葉に顔を上げると少し笑った彼女と目が合う。

「誰も、貴方を軽蔑したりしないわ」
『でも私、気持ち悪い』
「好きな気持ちを気持ちが悪いだなんてそんなこと言う人雄英に、A組にはいないわ」

彼女の言葉に目の前が滲んでいく。

「辛かったでしょう?私は貴方の味方だって伝えたかったの」
『』