素直じゃないのはお互い様


「てめェ何で一人でいんだよ。半分野郎はどうした。」
『え、っと…』
「どこまで行こうとしてたんだよ。アイツらが戻ってこないとも限らねぇから送る。」
『…爆豪のとこ』
「は?」

抱かれていた肩は離されて物理的距離ができる。
いつも以上に優しい爆豪に泣きそうになりながら答えると素っ頓狂な声。

『爆豪のとこ、行こうとしてた』
「ンでだよ。」
『えっ、と…それは…』
「まぁいいわ。家まで送る。」

言葉に詰まると彼は先に路地から出ていく。

『…なんで焦凍…轟といたの知ってるの?』
「…クソ髪とアホ面が連絡してきた。」
『そ、か。』
「で、テメェが泣いてたっつうから」

言葉に詰まる爆豪の顔を覗けば、見んなと顔面を手で押えられる。
いや、普通に女子の顔押さえるとか酷くない?

『心配したの?』
「してねぇわクソが。」

いつも通りの爆豪で顔がにやける。

「気持ちわりぃ顔すんな死ね」
『はー、楽しいね』
「楽しくねぇわドMか」

こんな会話をまたできているのがとても幸せで気持ち悪いと言われてもニヤける頬を元に戻せない。

『あれ、でも何であそこにいるって知ってたの?』
「たまたまだわ」
『そっかぁ。そんな所もヒーローだね。』
「は?!」

私が笑うと驚いてこちらを見る爆豪。
街頭に照らされる爆豪の顔は少し赤くて、こっちまで伝染する。

『爆豪』

私が名前を呼んでも止まってくれないので腕を引っ張る。

「ンだよ」
『私爆豪が好き』

きっと君はいつもみたいに死ねって言ったり、無視するんだろう。
でも私は君に想いを伝えたかった。

『諦めようかなとか思ってたんだけど、』
「諦めんなや。」

返ってきた言葉は想像と違って、声もいつもとは違って落ち着いていて。
いきなり心臓が速く動く。

『っ諦めないよ』
「なら良かったわ。」
『うん、爆豪のこと大好きだからね』

そう笑うと真剣な顔の爆豪と目が合って息を飲む。

「俺も好きだ」

ずっと夢見てた。
いつかは私を見てくれればいいのにって。
その言葉がスっと入ってきて目の前がぼやける。

「ハ?!泣くなやクソが」
『だってっ、ばくご、が、私の事好きって…これ夢かなぁ…』

止めようとしても止まらない涙に自分ではどうすることも出来なくて出てくる涙を拭くしか出来ない。

「オイ」
『ごめ、ちょっと待っ、』

呆れられてしまう、急いで泣きやもうとすると腕を引かれてそのまま唇が重なる。

「夢じゃねぇだろ。」

間近にある爆豪は私の大好きな不敵な笑顔で私の頬に伝っている涙を指で拭う。

『夢、じゃない』
「帰んぞ。」

そう言って掴んだままの腕を引っ張られる。

『もう家ついちゃう』
「早く帰れや」

少し先に自分の家が見えて立ち止まる。
爆豪は私を早く帰らせようと腕を引く。

『やだ』

さっきの仕返しだ、と爆豪の頬を両手で包んでキスをする。

「っ、煽んじゃねぇ」

唇を離すと今度は爆豪に後頭部を押えられて何度もキスをされる。

「満足かよ」

唇を離した爆豪はそう笑ってもう一度だけ軽いキスを落とす。

あぁ、本当にこの人は。







本当に素直じゃない。



(爆豪が満足してないくせに)
(アァ?テメェが耐えらんねぇと思ってやめてやったんだろうが)
(私そんなにお子ちゃまじゃありません)
(あぁそうかよ。お前こっちに一人暮らしだったよなぁ?)
(そうだけど…)
(じゃあお前ん家泊まるわ。覚悟しとけや。)
(え、ちょ、早くないですか?)
(るせぇ煽ったお前が悪ぃ)