そう不敵に笑う彼が


夜の街、ただひたすら地図を見ながら走る。

早く、早く貴方に会いたいから。

会って大好きだって伝えたいから。

『っはぁ…』

あんまり最近食べてないせいか体力が落ちている。
確実に。
まだ10分くらいしか走ってないのに息が上がって立ち止まる。

近くにあった自販機で水を買って飲み干す。
お腹すいたなぁ。
爆豪に会ったらご飯奢ってもらおうかな、なんて思っていると肩に手が置かれる。

「久しぶりだねぇ」
『あ、あんたこの前の…』
「今日はデートだったの?随分可愛い格好してるじゃん。」

肩に手を置いてきたのはゲーセンで声をかけてきた他校の男。
少しでも触れたのが気持ち悪くて後ろに下がる。

「で?デート相手はどこかなー?」
『もう帰った』
「じゃあ一人なんだ。どう?これから俺と。」
『誰がお前と遊びたいんだよ。私忙しいからもういい?』

はぁ、とため息をついて彼から離れようとすると何かにぶつかる。
顔を見れば前にこの男とつるんでたヤツら。

『女一人に男五人って。どんだけ力ないわけ。』
「だってほら。君らってこわーい個性持ってるじゃん。」

だからね、と言って腕を引かれる。

『離して』
「大人しくしないと痛いことしちゃうよ」

ヘラヘラと笑いそれぞれ自分の個性を見せびらかす。
学生とは言え確実に敵だろこいつら。
隙を見て逃げないと、ととりあえず大人しく彼らについて行く。

路地裏に連れて行かれ、引いていた腕を投げられる。

『っ、』
「じゃあとりあえず、」

と男が上着を脱いだ瞬間、風を起こす。
砂が舞って彼らが怯んだ隙に駆け出す。

もう少しで大通りという所で後ろから腕を掴まれる。
やっぱり、食事をとっていないせいで個性が弱まっている。
もう無理だ。
爆豪に会いたかっただけなのに。
腕を引かれた瞬間目を閉じる。

「オイ」
「あ?ひっ」
「てめェ誰の許可取ってこいつに触ってンだよ。」

背中に触れた熱、聞きたかった声、会いたかった人。
彼の姿を見た瞬間、掴まれていた腕が緩み、肩を抱かれる。

『ばくご、』
「てめェも何こんな時間に一人で歩いてんだ」
『ごめんなさい…』

私を見下ろし睨むその顔は久しぶりに感じて心臓がギュンってなる。

「誰からぶっ殺されてえ?」
「す、すみませんでした!」
「今度コイツに手出したらマジでぶっ殺すかンな」

The小物!って感じで走って逃げていく後ろ姿を見送る。

「ハッ。ほんとクソつまんねぇ奴らだな。」

そう笑った彼にまた心を鷲掴みされる。







やっぱり君が好き