05
部活、部活ねぇ。
入学からはや一週間が経とうとしていた。
ゆりちゃんもさくちゃんも宣言通り、部活に入部した。
私はと言えば彼女たちについて見学はしたものの特に惹かれることはなく、ただ家と学校の行き来だけを過ごしていた。
バレー部、見に行ってもいいかなぁなんて心が揺れ動く。
煌めいた青春が送りたいわけでも、未練が残ってる訳でもない。
私がいたあの場所が戻ってくる訳では無いのだから。
それでも長い間関わってしまったわけで、物心つく頃には惹かれてしまったわけで。
どうしようか、なんて頭を抱えているとカバンから見えるシューズ。
『バレー…』
ぼそっと口に出すとすぐに顔がこちらに向く。
「シューズだけで分かんのか」
『えっ、あっ、まぁ』
コミュ障発動。
しどろもどろになりながら返事をする。
この子は確か、影山飛雄くんだ。
自己紹介の時、すごく怖かった印象。
「バレーやんのか」
『いや、やらないけどお兄ちゃんと幼馴染が…』
なんだやらないのか、と露骨に興味無さそうな表情をする彼に少しイラッとする。
『影山くんはバレー部なの?』
「あぁ。」
会話終了。
私が悪い訳では無いと思う。
この人会話する能力絶対ない。
あぁ、そうですかと言って机に突っ伏す。
もしバレー部のマネになったら、影山くんとも会話しなきゃいけない。
絶対気まずいよなぁ、やっぱりやめておくべきだろうかと悶々と悩む。
気づけば予鈴が鳴っていて、急いで授業の支度をした。
悩むくらいなら行ってしまおう、と放課後辿り着いた体育館。
聞き慣れすぎたシューズやボールの音に少しだけ胸が震えた。
チラッと小窓から覗くと部員たちの姿が見える。
でも…
『影山くん居ない?』
バレー部だと言いきった彼はその場にいなくて少し安心した。
烏野高校は少しだけ聞いたことがある。
兄より少し上の代。
小さくてよく跳ぶ選手がいたと言うこと。
ついた異名が"小さな巨人"。
それも昔の話。
今は全国大会で名前を聞くことはなくなっている。
でも見る限り、ちゃんと部活をやっているようでたかが部活という部員は見受けられない。
ちょっといいかも、なんて思って踵を返そうとした時トントンと肩を叩かれる。
「見学なら中入っていいよ」
振り向いた先にいたのは見目麗しい人。
女神、という言葉があっているのではないだろうか。
『あっ、えっ、あっ、あのっ』
緊張のあまり声が出ない。
自分の頬が赤くなっているのがよく分かる。
「もしかして違った?誰か呼ぶ?」
『あ!あの!私バレー部のマネージャーになりたくて!』
気づけばそう口走っていた。
その言葉に彼女は明るく笑って、私の腕を引いた。