04


それから入学までの毎日、研磨とゲーム三昧で過ごした。
母親には散歩くらいしてきなさいなんて言われたけど、迷子になると言ったら諦めてくれた。

てか、東京に比べて少し寒い。
いやだいぶマシなんだろうけど寒いもんは寒い。
家から出たくない。

入学式は親の車があったのでだいぶマシだった。
今日から徒歩かなんて嫌々ながら家を出る。

玄関を開けた瞬間、冷たい風が吹いてきて戻ろうとしたがおばあちゃんがニコニコ手を振ってきたので仕方なく家を後にした。

母親から貰った地図を頼りに学校まで向かう。

まだ綺麗に咲いている桜にやっぱり関東とは違うんだ、なんて思ったり。

風情を勝手に感じながら歩いた。

徒歩30分。
自転車でもいいけど、そのくらいは歩きたい。

少しずつ同じ制服の人が増えてきて迷子にならなかったと胸を撫で下ろした。



宮城県立烏野高等学校―――

私が通う学校の名前。

どうか怖い人と同じクラスになりませんように、と願った入学日。
特に目立つような人は居らず、既に何人かとメアド交換もしたので少しだけ期待に胸を膨らませていた。

「あ、蒼葉ちゃん!おはよ!」
『おはよー、ゆりちゃん』

後ろから駆けてきたのは同じクラスの金沢ゆりちゃん。
ポニーテールが似合う可愛らしい子だ。

「眠そうだね。またゲームやってたの?」
『まぁそれしか趣味がないもんで』
「はは、メールもいつ聞いてもゲームやってるーだけだったもんね」
『楽しいよー?やる?』
「不器用だから無理。あ!そういや部活決めた?今日から見学とかあるらしいけど」
『器用そうなのに。部活は特に決めてないかなぁ。』
「じゃあ一緒に吹奏楽しちゃう?」
『それこそ無理ー!肺活量足りない』

そんなふざけた話をしながら教室へと向かう。
少し迷いそうになったけど何とか教室にたどり着いた。
席に荷物を置くとすぐに私の席まで来て会話を続ける。
しばらく談笑しているともう一人見知った顔が現れる。

『さくちゃん、おはよ』
「おはー。」
「あ、さくちゃんは部活決めた?」

だるそうに私の背後から抱きついてきてるのは真壁さくらちゃん。
初日から寝ていて担任から注意を受けていた。

「私野球部のマネージャーやる」
『「え?」』

きっとどこにも入らないだろうと思っていた彼女の口から出たのは随分ハードそうな部活。
二人で思わず彼女の顔を見る。

「それまたなんで?」
「だって安仁矢と付き合いたいし」
『ちょっと、それドラマの話。』
「いいじゃーん。まぁ身長的には城山優が良いけどね。」

私たちが中学の頃流行っていたドラマの話。
そんなフィクションを夢見るのも彼女らしくて微笑ましかった。



拝啓、孤爪研磨様
私どうにかやっていけそうです。