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あの後、澤村先輩、菅原先輩、影山くんの三人はちょっとした相談をしていて私たちは先に帰路に着いた。

「俺送ってく!」
『え、別にここからそんなに遠くないし』
「いいよ!トレーニングになるし!」

そう言われるまま日向くんと帰ることになり、月島くん達とはそこで分かれた。

「押耳さんもバレーやってたの?」
『いや私はマネージャーやってただけだよ。幼馴染とお兄ちゃんがやってる。』
「へえ!すげぇな!強い?」
『お兄ちゃんは今大学のチームに入ってて、一応強い方だと思う…幼馴染達は…うん。きっと今強いと思う。』

そう笑うといいなぁなんて思いを馳せるように夕焼けを眺める日向くん。

「押耳さんはさ」
『呼び捨てでいいよ。同い年なんだし。』
「あ、そっか!じゃあ蒼葉はさ」

距離の詰め方えぐいな。
まぁ日向くんの良さはそういうところなのかもしれない。

「バレー好き?」
『…うん。好き。』
「っ!…そっ、か!」

私が笑えば日向くんは驚いたような表情を見せたあと、太陽のような笑顔で笑った。

『日向くんはなんでバレー始めたの?』
「昔、小さな巨人ってのがいて」
『ああ!知ってる!お兄ちゃんと同じ時期にいた人』
「まじ?!じゃあ小さな巨人と戦ったことあんの?!」
『いや、戦ったことは無いと思う。』
「そっかぁ…あ!俺も呼び捨てでいいからな!」
『え?あぁ、うん。』

小さな巨人ってすげぇんだよと熱く語る日向くん、元い翔陽にはまたしっぽが見えた。

『翔陽はバレーが大好きなんだね。』

私がそう言うと一層笑って力強く頷く。

『少しくらい幼馴染に分けてやりたい』
「え?幼馴染バレー好きじゃねぇの?」
『んー、なんか好きって言うかゲームの一部と言うか…多分嫌いでは無いと思うけど』

私の言葉に何言ってるか分からないと言う顔をして首を傾げる。

「そっかぁ。そいつもバレー好きになるといいのにな!」

翔陽のその真っ直ぐさに、きっと研磨も惹かれるはずだ。

『いつか会わせてあげるよ。』
「まじ?!じゃあ試合したいなぁ」
『翔陽はバレーのことばっかりだね』
「まぁバレーしかやってないからなぁ」
『クラスに可愛い子とかいないの?』
「えっ?!」

私の不意の質問に慌てた様子の翔陽。
これは多分、そういうのに疎いどころかあんまり意識したことないタイプなのだろう。

『あ、ほら翔陽のクラスの安藤さんとか結構可愛いって聞くよ?』
「アンドウサン…」
『待って翔陽もクラスメイトの名前覚えられないタイプ?』
「まだ!まだ一週間だから!すぐ覚えられるし!」

焦って否定する翔陽が面白くてしばらくツボに入っていると家の前までたどり着いてしまった。

『ここ』
「おー!良かった!じゃあまた明日な!」
『あ、翔陽!』

自転車に股がって去ろうとする彼の背中に声をかける。
ペダルに足をかけたままこちらを振り返る。

『翔陽も絶対小さな巨人になれるよ』

私のその言葉に翔陽はぱあっと明るく笑い頷いて去っていった。