01
『おはよーございまーす』
まだ静かな体育館に響く自分の声。
こちらを向いた視線は一つだけ。
「おはよ」
眠そうな私とは正反対に朝から爽やかに笑うスガさん。
眠そうだなーと言いながら私の前まで来て私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
『今日日直なんですよ〜』
「じゃあ午後練遅れてくる感じ?」
まぁそうなりますね〜なんて答えながら持っていたカゴを床に置いた。
ここ、宮城に来てまだ一年。
未だに寒さと雪には慣れないけど、高校生活には慣れてきたと思う。
「入部届どんだけ来るかなぁ」
『に…いや3は来ると思います』
「その心は?」
『適当です』
「だよなぁ」
なんてくだらない会話をしながら2年になったことを今一度思い知らされる。
昨年の今頃、私は
慣れない土地に、ひとりぼっち。
きっと孤独な学生生活を送るんだと絶望を感じていた入学式。
今は友達も、仲間もいる。
幼馴染に心配されたが、私は幼馴染の方が心配だった。
でも時々、気分で送られてくる写真は楽しそうで安心させられた。
ガラッと開いた体育館の扉。
挨拶をして何人か入ってくる。
「蒼葉、早いな」
『今日日直なんで』
「じゃあ朝練終わったら早めに帰っていいぞ。」
『すみません。』
気にすんな、と今度は朝から眩しい笑顔を見せた大地さんにわしゃわしゃと撫でられる。
おふたりとも容赦なく頭を撫でますがこれ朝早く起きて一応セットしてるんです。
なんてそんな事情知るはずもないので笑って返して手櫛で少し整えた。
髪型が崩れたとしても、二人の暖かい手に撫でられるのは嫌いじゃない。
『あ、潔子さんおはようございます』
「蒼葉ちゃんおはよ。もうドリンク用意してくれたんだ。」
『はい。あとタオルも一応。』
「ありがと。」
そう笑う潔子さんは相変わらず美しい。
感嘆の声を漏らすと首を傾げる潔子さん。
その姿も見目麗しいです。
『今日、日直で少し早く戻ります』
「うん。今日は多分そんなにやらないだろうし大丈夫だよ。」
本日、三度目の日直宣言。
いやめっちゃ日直楽しみにしてる人みたいじゃない?
楽しいわけが無い。
担任がまぁ日直に仕事を押し付けるの好きな人で、仕事量が他のクラスに比べて多いから宣言しているだけだ。
まぁお菓子をくれるので別に嫌いではない。
なんてぼーっとしていると大地さんの集合の声がかかり、部活が始まる。
今年こそ、あの舞台へ。