04


何度目かの機械音を聞いてこのまま寝てしまおうか、と制服のままベッドにうつ伏せになる。
あと一回、電話に出なかったら知らないと思いながらリダイヤルする。

嫌ってほど聞いた機械音がプツッと切れ、朝一番に聞きたくない声が耳に入る。

《…おー》
『おーじゃないよこっち三時半起きなんですけど』
《サンキューな》
『素直な田中キモイ』

それだけ言って電話を切る。
私の仕事はまだこれからだ。

もう既に起きている父親に声をかけ家を出る。
まだ暗い中に響くカラスの鳴き声に少しビビりながら学校へと向かう。

まだ五時までは時間がある。
のんびり歩いていると自転車に抜かれた。
あの頭…

『日向くん?』

随分元気なものだ、と思いながら大きな欠伸をして歩を進めた。



学校に着き体育館に向かうとアホみたいな声がした。

「田中先輩と呼べ!」
「田中先輩!!!」
「わはは!もう一回!」
「田中先輩!!!」
『ちょっとー、近所迷惑』

私の声に三人の視線がこちらに向く。

「昨日の、」
『どうもー。二年、マネージャーの押耳蒼葉です。よろしくねー。』
「「おなしゃーす!」」
『しーっ!だから静かにしてって!』

勢いよく頭を下げるもんだから二人ともを静かにさせて体育館に入る。

「体育館だあああ!ネットだあああ!」

私と田中の後から体育館を覗いた日向くんの声が静かに響く。
しっぽを振ってるように見えなくもない。

『じゃ、準備してくるからあとよろしく』

体育館の入口で何故か揉めている日向くんと影山くんを横目に倉庫の方へと向かう。
あぁ私もジャージに着替えてくればよかった。

まだ少し肌寒い気温に出ていた足をさする。



ボールも出したし、ネットも張った。
あとは特にやることもないので体育館の端にしゃがんで彼らを眺める。
暇だな。

『あ、私着替えてくるわ』
「おう」

田中に声をかけてジャージだけ持って倉庫に向かう。

「っておい!なんで倉庫なんだよ!」
『だってまだ校舎開いてないし』
「トイレとかあるだろ!」
『やだよ汚い』

田中の言葉を無視して倉庫の扉を半分だけ閉めて着替えをすませる。