01
『研磨ー』
「なに」
ゲームをしながら寝転び、
『私さ、音駒行かない』
「へえ…え?」
最初は適当に返事をしたがその後すぐにゲームから目を逸らし私に目をやる。
『ちょっ、研磨、敵いるから』
「あ、ごめん。」
まずは目の前にいる敵を倒してからだ、とでも言うようにお互い画面に視線を戻す。
ひと狩り終わって静かにゲーム機を置く研磨。
「蒼葉」
いつも気だるそうな顔をしている研磨はどこか寂しそうな顔をしてて少し申し訳ない気持ちになる。
「それはクロの」
『クロのことは関係ないよ。』
思い当たる節をとりあえず口に出した研磨の言葉を遮るように首を横に振る。
『おばあちゃんが体壊しちゃって、お父さんがそっちの方に異動できないか掛け合って今年の春から行けることになったから。』
「それは蒼葉も一緒じゃなきゃダメなの?一颯くんの家とか」
『お兄ちゃんの家も考えたけど、心機一転、田舎暮らしもいいかなぁとか。』
そう笑うとそっかと言って笑い返してくれる。
『あ、でもゲームはいつでも付き合うよ?オンラインで出来ることだし。あと通信中電話しようよ!』
「そうだね。」
そう言ってゲーム画面に視線を戻す研磨が少し寂しそうで頭を撫でる。
「…何この手」
『可愛いなぁって』
「やめてって」
そう言いながらも手を退けないのは研磨の優しさだろう。
幼馴染と離れることはとても辛いけど、おばあちゃんには昔から良くしてもらっていた。
よく聞く嫁姑問題も無いようで今回の引越しを言い出したのも母だった。
母方の祖父母は既に他界しているので、そちらの問題もない。
不安が残るのは研磨のことくらいだ。
クロに扱かれすぎてバレー辞めちゃわないかななんて。
「蒼葉」
『ん?』
「俺なら大丈夫だよ」
私の不安が伝わったのか、呆れたように笑う研磨。
一瞬驚いたけどすぐに笑って頷く。
『どこからでも応援してる』
「俺も応援してる。」
今度は私が撫でられる番。
少しだけ小さな手に癒されて頬が緩んだ。