episode.01


「ようやく居なくなるよ」
「これだから女は」

聞こえるようにわざとらしく吐かれたその言葉たちを背に浴びながら、大きなダンボールを抱えてその場を後にする。

「名前っ」

私の元へ走ってきたのは同期の筒井桃子だ。
眉をこれでもかと下げて今にも泣きそうな顔をしている。

『桃子ー、泣かないでよ』
「だって私掛け合ったのに」
『仕方ないよ。余計なことを言う"女"は邪魔なんだから。』

桃子みたいに上手くやれれば良かったんだけどね、と笑うと首をふるふると横に振る。

「名前は何も間違ってないよ。」
『まぁでも、新天地で伸び伸びとやるよ。』
「あのSTに名前が行くなんて心配で仕方ないよ。」
『そのSTにはあの人もいるし。』
「頼りないから心配なんじゃない!この前だって散々泣き言言って私飲みに付き合わされたんだからね?!」

そう怒る桃子はいつもの彼女に戻ったようで思わず頬が緩む。

『頼りなくても私の恩人だから』

そう笑って彼女の頭を撫でれば少しだけ膨れる頬。

『私も泣き言言いたくなったらまた飲みに行ってくれる?』
「泣き言言いたくなくても、いつっでも飲みに行こう」
『そうだね』

対面にいた彼女は少し持つよ、と私の手から荷物を取って横に並ぶ。

警察組織と言うのは仲間意識が強く、正義感を振りかざすやつは邪魔でしかないとされる。
上の不正を正そうとしようもんなら直ぐに窓際行きだ。
触らぬ神に祟りなし。
飛ばされることになった私を桃子は自分の部署へと異動できるよう働き掛けてくれたが、それも虚しく私は庁内でも嫌われ者変わり者のSTに配属されることになった。
でも不安はない。
以前お世話になったあの人がいるのだから。



少し歩いた先にある一室。
桃子が先にそこへ足を踏み入れる。

それを追うように私も一歩踏み出した。

大丈夫。あの人がいるんだもん。
やっていける。