肆拾

猛烈にアイスが食べたくなって、財布一つだけ持ってコンビニへ行く途中。あんパンが目一杯詰め込まれたビニール袋を片手に歩いている人を見つけました。




まだ日の高いお昼時。久々の休みをのんびりと過ごしながら自宅で昼食を済ませた後、財布片手に外へ出た私はあんパンを大量に持った人に出会った。
思わず二度見してから凝視してしまったのだけれど、その人物が誰か気付いたのは声をかけられてからだった。

「あ、こんにちは。」
「…こんにちは。」

山崎さんだった。
ホント気付かないんだけどこの人。あ、でも今日は私服だ。これは仕方がない気がする。

「今日はお仕事お休みですか?」
「あ、はい…」
「あっ、すみません馴れ馴れしく!俺は山崎退っていいます。ご存じかもしれませんが、真選組の隊士です。」
「はぁどうも………吉田ユキです。」

名乗るように凄い促された。だってガン見だったもん。なのでチキンな私は名乗る事にする。どうせ調べれば分かる事だろうし。……え、怪しくて尋問されてるわけじゃ無いよね!?

「吉田さんですね。宜しくお願いします。」
「…宜しくお願いします。」

人の良さそうな顔でニコリと笑う山崎さん。だけど手元のあんぱん…張り込みですよね。どう見ても。
しかし此処で張り込みですか?なんて聞くのは死亡フラグの乱立だ。だって、私は山崎さんが真選組の隊員ってことくらいしか知らない、寧ろ今知ったところなのだから。
監察ってことは秘密なんだよね?顔がバレたら危ないし。
よし、此処は無難に…

「あんパンお好きなんですね。」
「え?あーいや、そういうわけじゃ無いんですけどね。」

はは、と笑う山崎さんは力無いけれどまだ元気そうだ。

「それじゃあ俺はこれで。」
「あ、はい。失礼します。」

ぺこりと頭を下げて、各々その場を後にする。


…あれ、そういえば原作で見張っている人本人と接触する話なかったっけ。あんぱん買った帰り道にぶつかって知り合う、みたいな。…あれ、大丈夫か私!?