君と夕飯
今日も仕事が終わり、のんびりと家に帰ってきた。今日は大福を貰ったから、これが夕飯でいいか。そういえば今日は真選組の人達が見回り強化してたな。そろそろ高杉さんが来るのかもしれない。夕飯キチンと作らなきゃ…いや、普段は作ってる!ただ、余りものの商品頂いたら食べなきゃでしょ。一人暮らしだから量によってはご飯になってもおかしくない…よね。
自問自答をー繰り返しながら家の鍵を開け、扉を開けて違和感。

…電気付けっぱなしだったっけ?

刻み煙草の香りがして高杉さんがいることは分かったが、電気が点いているなんて初めてだ。玄関に入り下駄を脱ぐ。其処で再び違和感。

…草履がある。

いよいよ怪訝に思って中に入ると最初にあるのはキッチン。そこに一人の男の人が立っていて、ぐりんと此方を向いた。

「おや、おかえりなさい。」

ギョロっとした目に思わず驚いて肩が跳ね、一歩下がる。すると何かにぶつかり、顔を見上げた。

「おっと、大丈夫でござるか?」

え、と固まる。玄関の開く音が聞こえると次は怒鳴り声。

「ちょ、置いていくなんて酷いっス!」
「…また子ちゃん?」
「おーユキ、ただいまっス!」
「…おかえり?」
「酷いんスよー。万斉先輩ったら…」
「お待ちなさい猪女。彼女も今帰って来られた所なんですから。」
「誰が猪女っスか!!ていうか、何時まで抱き締めてるんスか万斉先輩。」
「気にするな。」
「何言ってるんスか?」
「万斉さんも物好きでらっしゃる。もう少し幼ければ…」
「何言ってるんスか、武市変態。」
「変態じゃありません、フェミニストです。」

…なんか収集つかなくなってきたぞ。なんだ、何が始まったんだ。

「あの、皆さんなんで家に…」

と言った所でガサリと袋が鳴った。……しまったァァ!!大福だよコレ!!

「「「……」」」
「いや、あの、コレはですね。」

み、皆見てくるー!!すいません!

「はー、主は全く…しょうがないでござるな。」
「やっぱり晋助様の言った通りっスね!これ正解だったみたいッス。」
「…これ?」
「さぁ、お皿などの用意は出来ていますよ。中に入りましょう。」
「え?」

万斉さんにスマートに大福を持っていかれ、立ち往生する。いつまでも此処にいてもしょうがないので私も後に続いた。

「晋助様!ただいま戻ったっス!」
「ユキさんも帰って来られたんで早速ご飯にしましょうか。」
「ほら、何してるでござるか?」
「え?あ、はい。」

万斉さんに促され、床に座る。もちろん正座で。皆も各々席につく。高杉さんはいつも通り窓際に座り我関せず煙管を吸っていた。

また子ちゃんが大きな風呂敷包みを机の上に置き、万斉さんがお酒の瓶を置いた。風呂敷を開くと大きな重箱。お、おおぉぉぉぉ。中身は素敵なお弁当だ。おせち?だって海老がいるよ!?旬の野菜と魚。バランスよく入ったそれは彩りも綺麗で思わず魅入る。
ふいに四方から感じた視線に気まずくなり目が泳ぐ。たぶん皆呆れてるんだろうな。

「今回はご苦労だったな。今日は好きにやれ。」
「勿体無い御言葉っス!」
「ありがとうございます。」
「ユキ、晋助に酒をついでやってくれぬか?」
「あ、はい。もちろん。」

万斉さんにお酒を渡されて高杉さんに近付いて側に腰を下ろす。瓶ごと傾けて高杉さんの持つグラスに注いだ。飲み干すのをジーッと見ているとふと高杉さんが此方を見てきた。

「…ユキ、あれはなんだ。」

高杉さんの視線を追うとそこには大福。しまったァァ!!万斉さァァん!!

「はぁ…」

ビクッ。チラリと窺うように見ると既に視線を外し、グラスに残った酒を煽っていた。…怒ってる?

「おら、テメェもさっさと食ってこい。甘味なんぞ食うんじゃねーぞ。」
「あ、はい。」

お酒をその場に置いて元の場所に戻る。すると隣にいる万斉さんはお酒をついでくれ、また子ちゃんは小皿に幾つかのおかずを見繕ってくれた。武市さんは箸を配ってくれた。何この至れり尽くせりな状況。四人で乾杯を軽くして口をつけた。

「ユキ、もっとこっちに来るでござる。」
「ユキ、其処から動くんじゃないッスよ。」
「ユキさん、この薬試してみませんか?天人のクスリなんですが、10歳程若返るとか。」
「なんつー怪しいもんもってるんスか武市変態。」
「変態じゃありません、フェミニストです。」

テンポよくされる会話に耳を傾けながら高杉さんを一瞥すると、彼はカーテンの隙間から空を眺めていた。其処にはきっと月が輝いていて。不意に見えた口元が綻んで見えた私は、嬉しくてほんの少し笑った。


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黎様リクエストありがとうございました。
今の所、鬼兵隊の皆がユキと各々の関係を知る予定はありません。てことでifとして読んで頂ければと思います。御要望だったまた子ちゃんと共にツッコミですが、やっぱりユキちゃんはツッコむとしても心の中。もしくは黙って見てると思うので控えさせて頂きました。すいません;
ありがとうございました!
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