彼のデートプラン

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「あ、の…ユキさん…!!」
「はい。」

もうすぐクリスマス。街にはサンタ(コスプレ)が溢れかえり、街行く人は浮き足立っている。ケーキ屋は戦場に変わり、お洒落な店はツリーとかの飾り付けに力を注ぐ。
そんな中俺はいつもの甘味処に来ていた。巡回の途中(ということになっている)なので隊服のままだ。隊服の時は店に立ち寄っても5分がいいところだ。俺は真面目っつーことになっているから。ところが今日の俺はかれこれ10分以上ユキさんと横に並んで座っている。客も少ないからと、店の大将が気を利かせてユキさんを貸してくれたのだが、なかなか俺の口は話し始めてくれない。
今だ!言うんだ俺!

「その…クリスマス!」
「?クリスマス?あー、来週ですね。」
「あの、その、ユキさんのご予定は…?」
「へ?えーと、朝から普通に仕事ですね。」
「俺、その日早番なんでさァ。だから、あの、その…よ、夜!夜、呑みに行きやせんか?」
「え?あ、はい。私で宜しければ。」

!!!
幻聴じゃねぇよな!?よっし!!よっしゃぁぁあああ!!やった、俺はやったぜ!!

「ほ、ホントですかィ!?」
「ええ。あ、でもこの間沖田さんと行った居酒屋暫くお休みなそうなんです。」

何処行きますか?と首を傾げるユキさん。これがアレですかィ。胸きゅん。なんかきゅんきゅんしまさァ。

「じゃ、じゃあ、あの!俺、探しておきやす!」
「ありがとうございます。」

その後は簡単な待ち合わせ場所とかを決めて、俺は店を後にした。…ぃよっしゃぁぁぁぁああ!!!

屯所に帰ると食堂に隊士が何人か集まっているのを見かけたので、冷凍庫からアイスを出して食べながら近付いた。

「なに見てるんでィ。」
「あ、隊長!」
「お疲れっす!」

どうやら集まって見ていたのは一冊の雑誌らしい。いつものエロ本かと思って尋ねると違うそうだ。

「いやー、彼女と何処行こうかって話してたんすよ。」
「『クリスマスデート特集』…?」
「やっぱり夜景を見ながらロマンチックに過ごすのがいいって!」
「いやー、今から予約しても遅いだろ。」
「うっそ!マジで!?うわー、どうすっかなー。」
「あれは?イルミネーション。」
「ゲェッ。俺休みの日にあんな混んだ場所勘弁!大体あれってイルミネーションっつーより人見に行くようなもんじゃねーか。」
「あー、寒ぃしなー。」
「んなこと言ってたらヤるしかねーじゃねーか。」
「だからテメェはすぐ振られんだよ!」
「ウッセェ!大きなお世話だ!」
「つーか、マジでどうしよう。隊長、何か良いアイデアありません?」
「…」
「隊長?」

話し掛けられても俺はすぐに反応が出来ない。こいつら今なんて言った?

「今からじゃ店予約出来ねぇのかィ?」
「え、ああ。24、25日は無理じゃないですか。」
「つーか、プレゼントどうすっかなー。」
「俺しゃねるのバッグって言われた。」
「それ完璧に貢がされてねぇか?」
「あーでもなー、やっぱり妥当にアクセサリーかなー。」
「アクセサリーは独占欲の現れって言うしな。」
「服とかだとセンスがあるしなー。」
「俺去年帯あげたんだけど結局着けてくれたの一回だけだったな。」
「何にすっか。隊長どう思います?」
「…」
「隊長?」

プレゼント?そうか、プレゼントか。いやでも、付き合っても無ぇのにアクセサリーはダメじゃねーか?

「うーん…」
「つーかやっぱりまずは店の予約だよな。局長に譲って貰おうかな。」
「あー、新しく出来たっていうターミナルにある店だろう?」
「雑誌にも乗ってたぜ。対応も良いし、料理も旨いらしい。」
「姐さん誘うって張り切ってたもんな…」
「無理だろ。」
「無理だな。」

そうか、その手があったな。俺もその記事見たことある。結構雰囲気も良さそうだったな。

「無理だろ。クリスマスとかキャバ嬢は稼ぎ時じゃねーか。」
「だよな。」
「結局スマイル行って泣きながら帰って来るんだろうな。」
「褌一丁でな。」
「ぎゃはははは!」

取り敢えず近藤さんか。よし、早速譲って貰おう。そうしよう。
思い立ったら吉日。早速近藤さんの部屋を訪れると、絆創膏だらけのボコボコの顔をした近藤さんが笑顔で迎えてくれた。

「おー!総悟か、どうした?」
「近藤さん、お願いがあって来やした。」

部屋に入り、珍しく正座をして、真剣な顔をして言った。すると近藤さんは目を見張り、真剣な面持ちで局長の顔をした。いや、別にそんな深刻なもんじゃねぇんだけど。いや、深刻っちゃあ深刻だけど。

「俺に、レストランの予約を譲って下せぇ!!!」

キョトンと見てくる近藤さん。が、次の瞬間大声で叫び始める。

「ェェエエエエ!?ダメ!ダメだぞ総悟!あの店はお妙さんの為に半年も前から予約をしてだなぁ!」
「お願いしやす!!」
「やだ!やだやだやだ!俺だってお妙さんと行きたいもん!デート楽しみにしてんだもん!」

くそっ。やっぱ一筋縄には行かねえか。なら、最後の手段。

「近藤さん。」
「なんだ?いくら総悟だろうと俺とお妙さんのデートを邪魔するなんて許さんぞ!」
「そんなんじゃありやせん。つーか、その逆でさァ。」
「逆?」
「ええ。クリスマスといえばキャバ嬢は稼ぎ時ですぜィ。ならそんな時に姐さんが店を休むなんて事出来るはずがありやせん。」
「確かにそうだな。お妙さんは責任感が強いからな!ならやはりさっきのは照れ隠し!?行きたいけど行けない…そういうことか!!」
「…ですから近藤さんが店に会いに行くべきですぜィ。」
「そうか、そうだな!」
「レストランのキャンセルはキャンセル料が発生するんで俺がそのまま使わせて貰いやす。」
「おお、いいぞ!ありがとな総悟!」

こっちこそありがとうございやす近藤さん。素直すぎるこの人に柄にもなく涙が出そうになった。
まあ、何はともあれこれでレストランはOKだ。詳細は後で聞くとして…プレゼントか。時刻は3時過ぎ。時間的にはまだ店はやってるし今から行くか。

「あ?総悟、何処行くつもりだ。」
「俺は今から見回りでさぁ。テメェも仕事しろよ土方コノヤロー。」
「ああ!?つーかお前さっき行ってきたんじゃねーのかよ。」
「俺のストーカーですかィ?死んでくれねーかな土方。」
「テメェが死ね。あ、おいコラ!!」

うるせー土方を放っておいて外に出た。あーどうすっか。



────
そんなこんなであっという間に25日。日が沈むのがすっかり早くなり、寒さに身を縮める。待ち合わせ場所はユキさんの家の前。コンビニとかだと其処までの道中、俺が心配だから。
服装は今度は隊士の彼氏持ちの奴らの意見を参考にした。なんだかんだ俺よりも経験豊富なんだろうし。
うだうだ考えながら待ち合わせ場所に近付くとユキさんが既に居て、驚いて走り寄る。なんで、だってまだ10分も前なのに!

「ユキさん!」
「あ、沖田さん。こんばんは。」
「こ、こんばんは。…じゃなくて!なんでこんな所で…、寒かったでしょう?」
「厚着してきたんで大丈夫ですよ。以前は待たせてしまったので今日は私が先に居ようって思って。」

寒くない筈がない。だって話している間も息が白く変わり、光に照らされて見えた頬や鼻は赤くなってしまっている。

「すいやせん。今日は少し歩くんですけど大丈夫ですかィ?」
「ええ。」

近場にあった自販機で暖かい缶コーヒーを買って手渡す。

「取り合えずコレで辛抱してくだせェ。」
「わ、ありがとうございます。…暖かい。」

暗くて良かった。俺絶対顔真っ赤でさァ。だって寒いどころか熱い。つーかユキさん可愛いぃぃ。化粧も着物も仕事の時よりも気合いを入れてくれたのが分かる。ユキさんもデートだって思ってくれているんだろうか。
きゅんきゅんトキメキながらそのまま二人で歩き始める。時折綺麗に飾り付けられた家を見ながら大通りへ。やはり大通りは人が溢れていてこの中を歩くのかと思うとウンザリしたが、隣にユキさんが居るだけで気分も上昇…あれ?ユキさんが居ねぇ!?いつの間に…、つーかどうする!?

「、お、きたさんっ!」
「ユキさん?」

背後からパシッと手を捕られて、驚いて振り返る。そこには息を切らしたユキさんがいてホッとした。

「良かった、はぐれたかと思いやした。」
「スイマセン、ちょっとイルミネーション見てたら人に流されちゃって。」
「こっちこそすいやせん。」

二人で顔を見合わせてクスリと笑う。あー、幸せでィ。

「つーか、どこのイルミネーション見てたんですかィ?」
「上です。ほら。」

そう言われて見上げると普段では見ることの出来ない光景が夜空に広がっていた。

「スゲェ。」
「ね。」

夜空にはいつも通り船が飛んでいるのだが、その船一隻一隻がカラフルに飾られていた。夜空をゆっくりと進むそれらは幻想的で。
ユキさんと一緒にいるだけで普段気にもしない事に気付く事が出来る。全てが新鮮で、世界が鮮やかになるんでさァ。

「もうすぐ着きやす。行きやしょうか。」
「はい。」

ユキさんの手を取って先へ進む。今度は離れないように。


レストランに着くと上着を取られ、予想外の豪華さに顔には出さずに驚く。窓際のカウンター席に案内され、席につく。食事は事前に頼んであるので問題なしだ。

「凄いところですね。」
「ですねィ、俺も驚いてやす。」
「私こういう所慣れてなくて。」
「俺もですぜィ。実は此処の予約したのは上司なんでさァ。予定が合わなくて来れなくなったらしくて、譲って貰ったんでさァ。」
「そうなんですか?ありがとうございます、誘って頂いちゃって。」
「こ、こっちこそ。来てくれて、ありがとうございやす。」

また二人で笑いあってグラスを手に取った。

「メリークリスマス」
「メ、メリークリスマス」

カチンとグラスを鳴らして乾杯をする。また二人で笑ってから酒を喉に通した。
プレゼントを渡して、会計はトイレ行った時か行ってる時に済まして…。まだまだやる事が多くて酔ってる暇なんか無ぇな。緊張で火照る頬を誤魔化すようにもう一口、酒を煽った。

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