高杉さんから招待状を貰った。
違った。招待状と思われる手紙が置いてあった。何処にあったかというと、家の机の上だ。なので私宛なのは間違いないのだけれど、なぜあやふやかと言うと読めないからだ。達筆!高杉さん達筆!
封筒の表面に書かれた三文字の招待状という文字はおそらく合っていると思う。けれど中の文章。これはアウトだ。無理。無理だよ高杉さん。ハードルが高いよ!
あ、ご丁寧に月日と時刻が文章と少し離れた場所に書いてあった。時間はよく分からないや。昔の時間の読み方も詳しくは知らないし、そもそもその漢字一字が読めないのだから。取り敢えずその日一日空けておこう。
12月25日。
この日が何の日かなんて街の浮かれようを見れば分かる。クリスマスなんてやるんだ、なんて少し笑いながら着物に袖を通した。
招待状なんだから、多分何処かに行くんだよね。じゃあ何かお土産持って行かなきゃ。何がいいかな…お酒でいいかな。
あ、折角だし何かプレゼントを用意したいな。お酒…いやいや、それはお土産だし。うーん。
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「うわぁ凄い。屋形船なんて初めてです。」
「ほぉ、そうかい。」
当日。夕方に颯爽と現れた高杉さんに連れられて辿り着いたのは綺麗に電飾で飾られた屋形船だった。高杉さんの後に続いて乗るとまた子ちゃんがパタパタと小走りで迎えてくれた。
「あっ!おかえりなさいっス晋助様!!」
「あぁ、首尾はどうだ。」
「完璧っスよ!ユキいらっしゃいっス!」
「こんばんは。」
「さぁ、入って下さいっス!」
「お邪魔します。」
中に入るとお鍋を囲んだ食卓。食器を並べていた武市さんがコッチをグリンと振り向いて、反射的に仰け反った。
「おや、おかえりなさい晋助さん。ユキさんいらっしゃい。」
「こ、こんばんは。」
「さあさあ寒かったでしょう。中へどうぞ。」
「戻ったでござる。おや、晋助もユキも来ていたか。」
「万斉。」
「心配せずともキチンと取ってきたでござるよ。」
「あ、コレお土産です。」
「おやおや、ありがとうございます。」
良かった。お土産も渡せたし、取り敢えずはミッションコンプリートだね。
「御苦労だったな。好きにやってくれ。」
「「「「カンパーイ!」」」」
カチンとグラスをぶつける。酒を喉に通すとカァッと熱くなり、グラスを置いた。ぼんやりと周りを眺めていると、武市さんがせっせと鍋の具をよそってくれているのに気が付いた。
「ほらユキさん、お取りしますよ。」
「あ、すみません。」
「ユキもっとこっちに寄るでこざる。」
「ユキそのままでいるっスよ。晋助様!どれ食べますか!?」
「酒。」
ゆっくりと始まった宴会はとても楽しくて。気付いたら結構な時間が経っていた。
外に出て顔の熱を冷ます。
部屋の中から賑やかな声が聞こえてきてクスリと笑う。その時高杉さんが外に出てきた。
「高杉さん?」
「ふー…、どうした。」
煙を吐き出しながらゆっくりと近付いてくる高杉さん。
「いえ、…ありがとうございました。誘っていただいて。」
「ふん、……寒ぃ。」
「ふふ。」
でしょうね。薄着ですもんね。
「あ…、雪。」
空を見上げるとはらはらと白い雪が降りてきていて、手を口元に持ってきてはぁーっと息を吐いた。