銀さんを誘う

「坂田さんさっき大将に戴いたんですけど、一緒に行きませんか?」

丁度お店に来ていた銀さんにチケットを見せながら訊ねる。銀さんは目を見開いて団子をくわえたまま固まってコッチを見上げている。

「…いやなら別に無理しなくても、」
「いやいやいや、いや、いやじゃなくてだな。えーと、あの、さ。」
「はあ。」
「…俺で良いわけ?」
「え?ええ。私で良ければ、ですけど。」
「い、良い、良い!行こうぜ!」
「なら良かった。土日は混みそうなので、平日に行きませんか?」
「おお、そうだな。いつでもいいぜ、俺は基本暇だから。」

自慢出来ることではないと思うが、心に留めておこう。

「日にちもあんまり無いみたいなんで、明後日とかどうですか?結構急てすけど…。」
「問題ねーよ。」
「じゃあ明後日の朝9時、大江戸遊園地前で。」
「おー…楽しみにしてる。」

ポンと頭を軽く撫で、銀さんはお金を置いて帰っていった。遊園地なんて久しぶりだな。楽しみ。




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 当日ー…

いつもより少しだけ派手めに化粧をして、流行りのミニ丈ではなく年相応の長さ、色の着物を着る。銀さんもいい歳だし若作りの必要はないかな、と。

「お、来たな。」
「あれ、随分早いですね。スイマセン、早く来たつもりだったんですけど…」

現在、待ち合わせ十分前。銀さんの様子を見ると、もっと前から居たみたいだ。申し訳ない。

「あー、平気平気。俺が勝手に早く来ちまっただけだから。んじゃ、行くか。」
「はい。」

いつも通り怠そうだけど、口元が緩んでる。良かった、遊園地嫌いじゃないみたい。銀さんってこういう場所面倒臭いって考えてそうだったから。少し小走りで後を追いかけた。

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