暗闇での光
確かに言った。制覇だって。
ちくしょー、こんな暗くなってから入るんじゃなかった。先延ばし先延ばしにしていたらすっかり空は暗くなっていて、暗闇で青白く光るあの屋敷は反則だと思う。
隣で心配そうにコッチをみているユキに心配すんなと笑って空を仰ぎ見る。
「あ、そうだ。何か飲み物買ってきますね。」
スッと立ち上がったユキの腕を咄嗟に掴む。いや、そりゃあ気分が悪そうだから心配して言ってくれているんだろうってのは分かっているんだが…こんな暗闇に一人残して行かないでェェェエエエ!!
「?坂田さん?」
「いい。」
「え?」
「行くなよ。」
少し驚いた顔をした後にコクンと頷いてから隣に座ったユキ。あーくそ、格好悪ぃ。いっつも最後の最後で決まらねーな俺って。
日が暮れてから少しずつ冷えてきた空気。冷たい空気を胸いっぱい吸って吐き出すと、気分が少しだけスッキリした気がする。
「…あ、坂田さん。アッチ見て下さい。」
「あ?…お。」
遠目に見えたのはキラキラと輝いているパレードで。小さく聞こえる陽気な音楽に自然と笑みが浮かぶ。
「綺麗ですね。」
「…あぁ。もっと近くで見るか?」
「いえ。」
静かに首を振った後見上げてきたユキに首を傾げる。観覧車の時も思ったが、こういうもんって近くで見たいもんじゃねぇのか?
「向こうは人混み凄そうですし、それに…」
まだ俺が気持ち悪そうなのを気にしてくれているんだろうか。まあ、自慢じゃねぇが尋常じゃない手汗だったろうしな。
「静かに二人で見るのも有りだと思います。」
ふわっと微笑んでから光を目を細めて眺めるコイツに息を飲む。
「おー…そうだな。」
こういう時、どんな顔すりゃいいのかも分からねーし、気の利いた言葉も出てこねぇ。取り敢えず、今の俺にはこれが精一杯で。
「今日は楽しかったです、制覇も出来ましたし。」
「おー、俺もだ。」
お化け屋敷は散々だったけど。
「ありがとうございました。」
この笑顔を見れたんなら、それも笑い話かと思えて。
「俺も、ありがとな。」
さっき掴んだままだった腕を一度放して手を握ると、驚きながらも握り返して笑ってくれた。
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