お土産

あーもう今日は幸せでさァ。
お化け屋敷でもユキさんとて、…手!繋げたし!キャーッとか叫んで飛び付いてくるのを少しだけ期待していた(ユキさん以外の女がやってもウザイだけだ)がそれはなかった。
けれど、仕掛けが発動する度にビクッとして手を少しだけ強く握ってくる彼女に、何度胸が締め付けられたか分からねえ。
あーもうなんでそんなにツボをついてくるんですかィ?キャーキャー騒いでるだけの女なんかよりもこう…グッとくる。この人は俺が守らなきゃ、みたいな。いつもの俺ならドSゴコロ擽られるっつーのに、相手がユキさんってだけでこうも違うものなのか。俺にも人並みの庇護欲があったんですねィ。この年になって新発見でさァ。
ほんと、ユキさんと居ると俺じゃ無えみてえだ。でもそれが不思議と嫌じゃなくて。

「あ、パレード来ましたよ!」

今隣でパレードに瞳を輝かせている彼女にまた鼓動が高鳴るのを感じて。

「あれなんていうキャラなんでしょうね?名前も知らないのに今日1日でなんか愛着が湧いてきました。」
「俺もでさァ。行く場所行く場所にアイツのグッズやイラストがありやしたからね。」
「沢山写真撮りましたもんね。」

行く先々で写真を撮っていたわけたが、多くの写真でアイツは俺とユキさんの間に鎮座している。それを憎らしく思えど、これだけ多くの写真が撮れたのもアイツのお陰で。
キラキラと光を瞬かせながら過ぎ去っていくパレードに目を細める。この幸せなひと時ももうすぐ終わりを告げるんだと思ったら切なくなってきた。

「今日は凄く楽しかったです。」
「お、俺もでさァ!!」
「良かった。」

嬉しそうに笑うユキさんにキュンキュンしながら懐から小さい紙袋を取り出す。

「あ、あのっコレッ…!」
「?開けてもいいですか?」
「は、はい。さっき買ったんでさァ。あの…その…」

ガサガサと袋を開けて取り出されたのはストラップ。実は既に俺の携帯にも同じものがついていたりする。気恥ずかしくて顔を伏せる。

「俺と、お揃い…なんですけどねィ。その…」

言葉に詰まってしまい、チラリと顔をあげてユキさんを見ると目を細めて微笑んでいた。その表情に息をのんだ。

「ありがとうございます。」
「っ!」

暫く固まっているとユキさんは少し首を傾げて微笑み、再びパレードに視線を移した。あーもう、反則ですぜィ。赤いと自覚している顔を片手で覆って自嘲気味に笑った。

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