土方さんを誘う

お昼休憩をもらったので、お財布にチケットを入れて定食屋へ。焼き魚定食を頼んでからチケットを取り出して文字を読む。
あー、日にちが次の日曜日までか…。確かに短いな。どうしよう、誰を誘おうかな。

運ばれてきた定食を食べながら思案する。ふと視線を感じたので顔をあげ、入り口に顔を向けると隊服姿の土方さんがチケットを凝視していた。思わずビクッと肩が跳ねたものの、土方さんには問題ではなかったようだ。気にせずに隣の席に腰掛けてきた。近いな。

「…こんにちは。」
「行きてぇのか?」
「は?あぁ、コレですか?頂き物なんですけど折角頂いたんで、と思って。」

スッと自然に一枚抜き取られ、彼はチケットを凝視。あれ?土方さん行きたい感じ?

「日曜までか。分かった、開けとく。」
「え?」
「土日は無理だから…金曜でもいいか?」
「はあ。」

あれ?土方さんと行く感じ?

「じゃあ朝9時に大江戸遊園地前だからな。遅れるなよ。」
「あ、はい。」

どうやら一緒に行く事になったらしいです。うーん、店に戻ったら御言葉に甘えて大将にお休みを貰おう。


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 当日─…

ミツバさんを見習って清楚に纏めてみた。やっぱり真選組副長土方十四郎の隣を歩くわけだから、それなりの格好をしなければと思ったのだ。あの人はツッコミだけど基本的には常識人で、クールな感じだからそれに併せてみたのだ。

約束の十分前に行くとまだ来ていないよう。いい天気だな、と空を見上げているとフワッと煙草が香った。視線を下げると少し驚いた顔をした土方さんが歩いて来た所だった。

「随分早ぇな。待たせちまったか?」
「いえ、今来たばかりなので。」
「そうか、じゃあ行くか。」
「はい。」
「あ。」

先を歩き始めた土方さんが不意に立ち止まり振り向いた。不思議に思いながら瞬きをしていると、フッと口元を上げて微笑んだ。

「今日のお前、いつもと雰囲気違うな。似合ってる。」

目を丸くする私に満足したのか、土方さんは再び歩き始めた。はっと意識を取り戻した時には結構距離こ開いていて、駆け足で後を追いかけた。

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