着ぐるみ発見!
いつもは落ち着いていて大人っぽいユキさんは、今日はなんだか幼く見える。年下の俺に合わせてくれたと思われる化粧や服装(年下ってことで気を使わせてしまっただろうか…。でも嬉しいメチャクチャ似合ってる。)も理由ではあるが、一番の理由は違うみたいだ。なんでもこの遊園地に来るのは初めてで、遊園地自体が久し振りだそう。
テンションの上がったユキの横を緊張しながら歩いていると、不意にチョンチョンと袖口を引っ張られ、心臓が跳ねた。
「わっ、見て下さい沖田さん。変な着ぐるみがいますよ!」
「(か、可愛い…っっ)ほ、本当ですねィ。折角なんで隣に並んで下せェ。写真撮りやしょう?」
懐から出したデジカメを見せながらユキさんに問う。
誘われた後に一番隊で内密に開いた作戦会議。隊士の一人がカメラを持って行くべきだと言ったので最新型のデジカメを購入。今日の為だけに買ったと言っても過言ではない。
「えぇ、アレとツーショットですか?沖田さんも入って下さいよ。」
「え。」
袖口を引っ張られてカメラを取られる。展開について行けずにいると、カメラは着ぐるみの横にいた従業員に渡され、あれよあれよと写真を撮られた。戻ってきたカメラのデータを見ると、真ん中に着ぐるみを挟んで呆然としている俺とニコリと笑ったユキさんが写ったものが一件だけ入っていた。
「あれ?データ空だったんですね。」
「は、はい。買ったものの使う機会が無くて…。」
本当は買ったのは凄い最近だけど。…というか近い。俺の持っているデジカメの画面を横から覗き込んでるのでとても近い。ちょ、俺手震えてねぇだろーな。
「じゃあ、今日は沢山撮りましょうね。」
ニコリと微笑むユキさんに胸がきゅーんとなる。あー、幸せでさァ。
決めた。このカメラはユキさんで埋める。ユキさんと見る景色も有り。
「あ、風船。」
不意にユキさんが上を見ながら呟いたので、俺も空を見上げる。赤い風船が一つ、空へと旅立っていた。何時もなら何とも思わないその光景も、今日は全てが色鮮やかで。
澄み渡る空と風船、カメラを構えてポチリとシャッターをきった。
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