この間和谷くんが昇段した。お祝いをしようと街にプレゼントを買い行ったとき、和谷くんが女の子と喫茶店でケーキを食べているのを発見。
楽しそうに話をしながらケーキを食べる和谷くん。女の子も楽しそうで。私はその場から逃げ出した。
別に浮気だとか思っている訳じゃない。いや、全く思って無い訳じゃないけど、和谷くんが私の事を好きでいてくれてるのは事実だとは思う。ただそれが一番かと言われれば首を傾げてしまうけれど。
まだ私だって和谷くんだって若いから学生時代の友人だって、新人だから先生との付き合いだってある。それに一々嫉妬なんてしていられないし、していたらきりがない。
だけど、だけど。あの光景が頭から離れない。あの女の子、可愛かった。和谷くん何だかんだ言って私のこと子供扱いするときがあるし、進藤くんの事を世話のかかる弟みたいに面倒を見ていたのも知ってる。お人好しっていうのもあるんだろうけど、子供…というか年下好きなんじゃないだろうか彼は。

「…って思うんだけどどう思う小宮くん。」
「どうって、そんな事で呼び出したのかよ…。」
「そんな事じゃないっ!」
「こんな所和谷に見つかったら俺殺されるんだけど。あいつの嫉妬深さはハンパねぇんだからな。」
「嫉妬なんてされたことないもん…」

机に顔を伏せてぐずぐずと鼻をすする。
手合いが終わってから小宮くんを捕まえて駅前の居酒屋に直行。それから小一時間、酔いもまわってきた事もあってじんわりと涙が滲む。

「あのなぁ…、お前が知らないだけでアイツは」
「小宮ぁ。」
「げっ、和谷!」
「んー和谷くん?」

なんで和谷くんが?と思いつつ顔をあげる。そこには本当に和谷くんが居て、避けていた事もあって久し振りに会えたのが嬉しくてヘニャッと笑う。

「………」
「おい、黙ったまま吉田を抱えて何処行く気だ。」
「分かりきってる事聞くなよ。じゃーな。」
「はあ…」



────
 和谷Side

「やぁっ」
「…なんで?」

自分の家に連れ込んで壁に背をつけて座る。脚の間にユキを向かい合うように座らせて、抱え込むようにするとユキは手を伸ばして嫌がった。
小宮は良くて、俺は駄目なわけ?なんて言わないけど。だってユキが俺のことを好きでいてくれるのも、小宮の事を友達としてしか見ていないのも分かっているから。それでも他の、俺以外の男とユキが一緒に居るのは嫌で。

「だっ、」
「ん?」

別に部屋に二人きりだからっていきなり襲う訳じゃない。あくまで愛情表現の一種で、今みたいにただ抱き締めて居るだけでも十分幸せだと思う。まあ、この潤んだ瞳で見られて俺の理性が何処まで保つかは分からないけれど。
伸ばされた手を取って口付ける。それを恥ずかしがりながらも逃げないのは、本気で嫌がっている訳じゃないからだろ?
暫く堪能していると、ユキの瞳からポロリと涙が零れて思わず動きを止めた。

「だっ、て…和谷くん、女の子と居た…っ」
「…」
「私っ…和谷くんが、女の子と二人きりなの…嫌だっ…」
「…」

顔を真っ赤にして、涙をポロポロと流しながら必死に言葉を紡ぐユキに思わずにやつく。だって、これは嫉妬してくれていたって事だろ?

「…可愛い」
「う、え…」
「嫉妬、したんだ?」
「ごめっ…」
「謝るなよ…俺も、嫉妬した。」
「へ?」

大きな目をキョトンとさせて俺を見上げるユキを抱き寄せる。髪を一房掬って口付け、そのまま首筋、頬へと這うように移動する。口の端で一度止まって鼻が触る程の近距離で目を伏せながら言った。

「だって、ユキ小宮と仲良いし。」
「…」
「今日だって迎えに行ったのに、本田さんが小宮と一緒に帰ったって言ってたし。…ユキが小宮の手を握って。」
「…あ、え?」
「嫉妬、した。」
「…ん、ごめ…」

手を取り合って恋人つなぎをする。少しでも離れたくなくて。少しでも近づきたくて。

「俺も…ごめんな。」

そっと、壊れ物に触れるように唇をあわせる。最初は触れるだけ。徐々に深く、ユキを味わう。時折漏れる吐息が、もっともっとと言っているようで。片手はユキと手を繋ぎ、もう片方の手で背に回してきつくきつく抱き締めた。





(でもユキが見たのって先生の娘さんだぜ?)
(う…でも嫌なんだもん)
((可愛い…!))




ほのぼのでは無いような気もしますが、こんな感じになりました。リクありがとうございました!