※『優先順位』と同主設定。


「ふひゃっ、ふひゃひゃひゃひゃ!」

珍しく昼までに部活が終わった土曜日。俺達誠凜高校の二年メンバーと黒子、火神は近所のストリートバスケに来ていた。火神がユキと勝負をするという事で面白半分でついてきたのだ。
そこで偶然出会った青峰と黄瀬。青峰を見た瞬間、火神が喧嘩をふっかける前にユキが指を指して爆笑し始めた。

「あ?なんだコイツ。」
「ちょ、笑いすぎっスよユキっち!青峰っちの顔が幾ら面白いからって…」
「んだとテメェ!その変な変装に爆笑してるに決まってんだろーが!」
「そんな事ないっスよ!」

それと同時に背後から緑間と高尾。展開についていけずに呆然とする。

「まったく、うるさい奴らなのだよ…」
「ちょっ、真ちゃん待てって!…ってあれ?」
「あー?ったく、ユキ早くやるぞ!」
「まあまあ火神くん落ち着いて下さい。」

…なんだこのメンバー!!?キセキの半分以上が勢揃いしてるんだけど!
ユキは笑い終えたのか鞄からポッキーを出して黙々と食べてた。笑った理由を聞けば青峰の口癖がツボなのだとか。なんだそりゃ、つーかなんで口癖なんて知ってんだよ面識ねえだろ。因みにどうしてユキが大人しく火神と勝負する事になったかといえば、ハンバーガーで買収されたかららしい。
呆れてユキを見ていると、いつの間にか話が進んだらしく、一年連中が集まって話し始めていた。

「折角このメンバーが集まったんスからバスケするっスよ!」
「あぁ?面倒くせー。」
「僕はいいですよ。火神くんはどうしますか?」
「俺もまあいいけど。つーか、此処にはユキとやる為に来たんだよな。」
「俺はやらん。」
「そう言うなって真ちゃん!あ、俺は不参加で。こんな面白い試合ムービーとらなきゃでしょ。」
「高尾!」
「ではメンバーは黄瀬くんと青峰くん、緑間くん、火神くん、僕ですね。」
「おいテツ、俺もやんのかよ。つーか五人しか居ねぇぞ。」
「其処にいるのって黒子っちの先輩さんっスよね?一緒にやらないっスか?」
「え、いや俺たちは…」

無理だろ無理!なにこの夢のメンバー!?この面子の中に交ざることなんて出来るわけねえだろ!

「ならユキさんやりませんか?」
「あー?コイツマネだろ?バスケ出来んのかよ。」
「やった!一度ユキっちとやってみたかったんスよ!」
「それなら俺はユキと別チームな!」
「3on3ですね。」

盛り上がる一年をコートの隅に寄って観察する事にした。高尾は俺達に挨拶を済ませた後、宣言通りムービーを撮って笑っている。ユキはといえばポッキーを食べ終え、ポテチをバリボリと頬張っている。おい、お前もやるんだぞ。何他人事の雰囲気出してんだ。

そうして始まった異色のゲーム。火神、青峰、黒子対黄瀬、緑間、ユキ。

「ちょ、なんかこれ不公平じゃないっスか?」
「なんだ黄瀬、何か不満があるのか。」
「なっないっスよ!緑間っち怒んないで下さいよー!」
「テツ、お前と組むのも久し振りだな。」
「そうですね。」
「おいっ!俺も居んだよ!」

審判とか…は居らねぇか。本気じゃねえんだし。全面を使うようで、各々位置についてジャンプボール。黒子が投げ、火神と緑間がやるようだ。

「行きますよ。」
「おうっ!」
「ふん。」

うおぉぉぉぉっ!と最初から全開の火神と、反比例して静かな緑間。
宙に放られたボールを弾いたのは緑間だった。

「なにっ!?」
「おお!緑間が勝った!」

そしてその弾かれたボールはぼんやりと立っていたユキに渡った。

「おっ」
「ユキっちパスっスよ!」
「そうは行くかよ!」
「早くするのだよ!」
「行かせるか!」

黄瀬と緑間には火神と青峰がマークについてしまい、実質黒子対ユキの一騎打ちとなった。……折角のメンバーなのに勿体ねぇぇぇえ!!
ボールをゆっくりとつきながらユキは黒子と対峙する。黒子は黒子で出方を窺っている。

「…」
「…」

ダムダムとボールの跳ねる音だけが辺りに響く。いや、あの二人の周りではさっさとしろだとかパスだとか声が飛び交っている。ユキはそれを見た後に両手でボールを持った。パスか?いや…

「シュート!?」
「む、無理だろ!だってハーフラインだぜ!?」

全身のバネを使って大きくジャンプ。

「左手は添えるだけ!!」

そう言って片手でボールをぶん投げた。

「「「添えてねぇーーー!!!」」」

突然のシュートに焦った後に一拍遅れて全員がゴール下へと走る。
あんなシュートの仕方見たことねぇよ!

「リバン!」
「任せるっスよ!」
「させるかぁ!」

バシュッ

「「「「…」」」」
「いえーっナイッシュー!」

ぺちぺちと黒子とハイタッチをするユキ。いや黒子敵だけど。つーか、

「「「ェェェエエエエ!?」」」
「ちょ、なにあれ日向何あれ!?」
「ナイスじゃないっすかー!」
「伊月黙れ!つーか、今の…」

マグレ、じゃねえのか?

「あんな事も出来んのかよ…!!」
「あー?なんだ今のシュート。」
「マグレでもすごいっスよユキっち!」
「型がなってないのだよ。」

この後もユキにボールが渡る度に点を入れるユキに呆然。

「あれは決勝で青峰がやっていた…!?」
「あれは黒子の加速するパス!?」
「あの距離からスリー!?」

その度にぽつりと似てない決め台詞を吐くユキに隣の高尾が爆笑。緑間がキレて青峰がユキを叩いて。火神が悔しがって黒子が宥めて。そんな一年連中とユキを見て出てくる言葉は一つ。

「ほんと、大物だよ。」

何もしてないのに疲れた気がする。ふぅと息を吐いて彼らとの差を噛み締めた。