山崎退の観察日記
○月△日 天気:晴れ

女中さん達の朝は早い。真選組には数人の女中さんが居るわけだが、中でも今日は吉田ユキさんちついて綴ろうと思う。

彼女は女中の中でも若く、独身であるため屯所で暮らすのは採用当初、近藤さんととっつぁんが危険視していた。それは勿論彼女が隊士を誑かすとかいう理由ではなく、彼女の身に危険が及ぶのではということである。
しかしその反対を押し切って彼女を屯所に住まわせたのが副長と沖田隊長だった。それを不思議に思っていたけれど、二人の様子を窺っているうちに理由が見えてきた近頃。
その二人の気持ち悪い行動も記録出来たらと思「何やってんでィ。」
「うわあぁぁぁぁっっ!?た、たたた」
「たたた?」
「隊長!なんですか!?」
「いやテメェがなんなんでィ。遂に監察からストーカーに転職ですかィ?」
「ち、違いますよ!」

局長じゃないんですから!いやでも、確かに怪しかったかもしれない。俺は食堂の入口で中を覗きながらノートにメモしているのだから。

「んな事よりもサッサと飯行きなせェ。ユキさんに手間かけさせるんじゃねぇぜィ。」
「あ、はい。」

俺を置いてサッサと食堂に入っていく沖田隊長。中を見れば稽古を終えた隊士達が大勢いる。既に立ち上がって仕事に向かう連中も居るのだから、俺や隊長は遅い方だと言える。
俺もお腹空いたし、朝ご飯を食べよう。カウンターに向かうと其処にはお馴染みのおばちゃんが立っている。えーと焼き魚定食お願いします。

「ちょ、また川田さんですかィ。ユキさんと代わって貰えやせんか。」
「なぁに言ってんだい、さっさと食べな沖田くん!」
「ちぇっ。」

拗ねた顔をして沖田隊長はトレーを持って席を探し始めた。
俺にも今日も一日頑張りな!と言って快活な笑みを浮かべてトレーを渡してくる川田さんはベテランのおばちゃん。注文をとったり、トレーを渡したりするのは大体川田さんの仕事だ。
それにありがとうございますとお礼を言って、空いてる席に座る。

「げ、副長。おはようございます。」
「おい山崎、なんで今げって言った?上司なんだけど俺。」

そりゃ悪態もつきたくなるって!そのマヨネーズのかかった朝飯目の前に出されたらさァァァァ!!犬の餌っつーか犬も食べないよこんなの!!

「ちっ、まあいい。俺今日午後から居ねえから、報告書早めに出せよ。」
「あ、はい。」

副長はあの気持ち悪い物体をかき込むと、さっさと席を立った。副長今日は非番だった筈だ。書類は溜まっているらしいから午前に片付けるんだろうけど、午後から何か予定があるのだろうか。
味噌汁を啜りながら副長を眺めていると、食器の返却口で女中さんと話している姿が見えた。おっと、確か今日はユキさんが皿洗いだった筈だ。トレーを持って急いで席を移動する。

「ご馳走さん。」
「土方さん。ありがとうございます。」
「おー。そういえばお前ペドロ見たいって言ってたよな。」
「…言いましたっけ?」
「公開は今日までなんだ。午後から行くだろ?」

副長の用事って吉田さんとのデートだったのか。既に約束していたみたいだし、これは沖田隊長ピンチじゃないかな。あれ?でも吉田さんの非番って昨日だったような…

「え?あースミマセン。仕事がありますので…」
「この間俺の非番が潰れたことまだ怒ってんのか?」
「え?えーと、お疲れ様です?」
「ったく、仕方のない奴だな。お前の好きな団子買ってきてやっから、それで機嫌直せよ?」
「(カチャカチャ、ジャーッ…キュッ)…え?あ、いってらっしゃーい。」

満足げに笑って仕事に向かう副長。絶対今吉田さん聞いてなかったよね?食器を洗う音と水を流す音でかき消されてるもの!ほら今も首傾げてるしィィィィ!なんかこの二人って噛み合ってないよな。

「ユキさんおはようございやす。ご馳走さまでした、美味かったですぜィ。」
「ふふ、それは良かった。今日も1日頑張って下さいね。」
「〜〜っっ!はいっ!」
「いってらっしゃい。」
「い、いってきやす!!」

う…初々しィィィィ!!食堂の外ではバンバンと壁を叩く音が聞こえる。恐らく沖田隊長が嬉しさを押さえきれずにいるんだろう。一番隊の隊員もなんだか温かい目で見ているし。毎食の事なのに隊長は飽きずに幸せそうだなぁ。

よーし、今日も1日頑張るぞ。





なんだか中途半端ですみません。昼も夜もこれループだ、と思って朝のみに。リクエストありがとうございました。