「ユキは料理が上手ですね。」
「エヘヘ」

最近漸く慣れてきた身体で包丁を持ち、スルスルと大根の皮を剥いていると松陽先生がにっこりと笑って言った。中身は大人だが褒められたのが嬉しくてヘラリと笑う。
村塾に幼児化トリップして三月。この生活にも大分慣れてきた。ガス、電気のない生活。他にも分からない事ばかりだったけれど松陽先生をはじめ、銀さん高杉さん桂さんが親身になって助けてくれた。

「ユキー!」
「松陽先生!」
「待たぬか二人とも、走るでない!」
「うっせーなヅラ!」
「遅ぇ、先行くぞ。」
「あっズリーぞ高杉!」

ダダダダッと廊下を走る足音と声に松陽先生と二人顔を見合わせて笑う。子供は元気だ。一番にひょこっと顔を出したのは高杉さん。次に銀さん、桂さんと続く。

「みんな、稽古お疲れさま。」
「おー、先生!俺強くなった!?」
「お前なんて俺に負けたじゃねーか。」
「それを言うなら高杉も俺に負けたではないか。」
「ヅラだって俺に負けただろーが!」

ぎゃあぎゃあと口喧嘩し始めた三人を視界に入れながら大根に隠し包丁を入れる。大根の下茹でするために火にかける。

「こらこら喧嘩しない、皆強くなっていますよ。」
「!」
「ありがとうございます先生。」
「ちぇー、皆かよー。」
「ユキ、ありがとうございました。遊んでいらっしゃい。」
「あ、はい。火点いてるのでお願いします。」
「ふふ、はい。いってらっしゃい。」

子供の発言として可笑しかったのか、松陽先生が笑う。ポンポンと頭を撫でられて、優しい瞳と目が合った。

「ユキ行こうぜ!」
「うん。」
「何すんだよ銀時。」
「あー何すっか…昼寝?つーか高杉、その手はなんだよ!」
「あ?」

銀さんが指差す。そこには高杉さんによって繋がれた手があって。あまりに自然に繋がれたので気にしなかったよ。

「手!ユキの手ぇ握ってんじゃねーぞ!」
「はっ」
「ユキ、こっちに来い。巻き込まれるぞ。」
「んだとヅラ!ヅラのくせにでしゃばってんじゃねーぞ!」
「ヅラではない桂だ!」

脱線しつつヒートアップしてきた銀さんと桂さんを一瞥して、高杉さんは再び手を握り直して手を引いた。

「ユキ行くぞ。」
「あ、うん。」
「うるせーって…あー!」
「銀時うるさいぞ…高杉が居らぬではないか!」
「チクショーッ!探すぞヅラ!」
「ヅラではないと言っているだろうが!ったく、仕方がないな。行くぞ。」

実はすぐ隣の部屋に隠れていた私たち。ダダダッと駆ける足音を聞きながら高杉さんを見る。高杉さんは離れていく声や足音を聞きながら口元を緩めた。

「クククッ、馬鹿だろあいつら。」

その姿はとても楽しそうで。高杉ィィィイイッと叫ぶ銀さんと桂さんの声に、私も吹き出すように笑った。