朝起きると体にほんの少しの和感。あ、これ風邪引いたなと思いつつ食欲もあまりないので水だけを飲んで家を出た。
そんな1日のお話。



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銀時Side

いつものように甘味処を訪れるとぼんやりとしたユキが目に入る。折を見て声をかけるとポヤンとした顔で見てきて思わずドキリとする。

「坂田さんいらっしゃいませー。」
「え?さっきからずっと居るけど。銀さんそんなに影薄い?」
「えー?はい。」
「はい!?つーかどうした?」
「あー風邪みたいです。」
「顔赤いけど熱あんじゃねーか?測った?」
「体温計家にないんで…」
「あぁ…。」

だよな。一人暮らしの家にあんまり無いよな。ポヤンとしたユキの前髪を掻き上げてコツンと額をあわせる。

「んー、まだそんな熱くはねぇけど。これから上がるかもな。」
「はあ。」
「ん?どうし…」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」

額を離して顔を覗きこもうと屈んだ時、叫び声が聞こえて店の入り口に顔を向けた。するとそこには派手なねーちゃんが立っていて。

「ぎ、ぎぎぎぎ銀さん何やってるんですかぁっ!?」
「あ?いやコイツ熱ー…」
「嫌な予感がしたから来てみたらやっぱりぃ!!」
「イヤだから熱…」
「出ていけぇぇええええ!!」
「うぉあぁっ!?何しやがんだ!」

このあと結局追い出された訳だが、後に聞いた話では体調不良と聞いて交代するために来ていたそうだ。


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山崎Side

現場に向かう途中、家に帰る途中の吉田さんを発見。いつもと様子が違う事に疑問を感じて声をかけた。

「吉田さん大丈夫?体調悪い?」
「や、お気遣いなく。」
「いやいやいや、気にする。気にするよそんなにフラフラしてたら。顔色だって真っ青じゃないか。」
「…」
「わあっ!大丈夫?」

突然しゃがみ込んだ吉田さんに焦る。酷い汗だ。

「頭、痛い…」
「へ?…あわわわっ!」

具合悪そうに俯く吉田さん。どうしよう、送っていきたいけど急がないと副長待ってるし。いや、そんな事言ってられないか。副長には後で説明するとして…

「山崎じゃねぇか。どうしたんでィ。」
「沖田隊長!」

ダルそうな声を出して声をかけてきたのは沖田隊長だった。いやでも此処で沖田隊長って…意味なくね?俺が副長に怒鳴られてても後ろでニヤニヤしてるような人だ。寧ろその原因を作るような人だ。…うん、やっぱり吉田さんの事は任せられないぞ。

「いえ、この方が体調が悪いらしくて。俺の知り合いなので、俺家まで送ってきますね。」
「ふーん、ネーチャン大丈夫かィ…!!」

緩く首を振る吉田さん。首を振るのも辛そうだ。

「吉田さん立てますか?背中乗って…うぶっ!!」
「山崎ィ、お前はさっさと現場行きなせェ。」
「へ?いやでも、」
「彼女は俺が看病するんで心配いりやせん。」

…心配しかねェェェエエ!!だってこの人ドSじゃん!ただの看病な筈ないじゃん!副長が寝込んだ時は意気揚々とバズーカを撃ちに行くような人だよ!?

「え、あ、あの、分かってます?一般人ですからねこの人。バズーカとか駄目ですよ?」
「その位分かってらぁ。ほら、さっさといけ。」
「は、はあ…」

隊長は彼女の手を握り、額、頬、首元に手を当てる。その仕草は優しくて、吉田さんを労っているのが感じられた。

「じゃ、じゃあお願いします隊長。」
「おー。」
「分からない事あったらメール下さい。なるべく早く返事出来るようにしますので。」
「へいへい。」

吉田さんを背負う隊長を足踏みしながら見送る。大丈夫だろうか。…仕事終わったら隊長に電話しよう。



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沖田Side

背負ったユキさんの重さを感じながら不謹慎にも口元に笑みを浮かべる。別にここでドSを発揮した訳ではなく、ただ単に頼られているのが嬉しいのだ。
しかしどうしたものか。自宅まで送っていったほうがいいですよねィ。けどそれは俺が家にあがるということで。いやいや煩悩んわ捨てろ俺ェェェェ!これは看病ですぜィ。病人を襲うなんて駄目に決まってまさァ(土方は別)。
眠っている彼女に一声かけてユキさんの巾着を漁る。鍵を入手して部屋の中へと入った。
電気を点けて部屋に入るとユキさんが目をさました。

「ん…」
「あ、起きやしたかユキさん。」
「…沖田さん?」
「へい。勝手ながら部屋あがらせてもらいやした。」
「あ…、すみません。ご迷惑をお掛けしました。」
「いえ、心配いりやせん。今から少し外出てきまさァ。何か食べたい物ありやすか?」
「へ?あ、いえ特には…」
「んじゃあ、ちょっといってきやす。ちゃんと寝ててくだせぇ。鍵借りていきやす。」

思考の追い付いていないユキさんを布団に押し込んで部屋を後にする。いやだって予想以上に密室に二人きりはキツかった。…俺の理性が。
こんなんじゃいけねぇと、頭を冷やすのも兼ねて買い物に出掛ける事にした。ゼリーとか果物も買おう。鍵を握り締めて大江戸スーパーへと脚を進めた。



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高杉Side

「ったく…」

久し振りに来てみれば真選組の沖田がいるし。出ていってから中に入ればユキは寝込んでいた。
少しだけ顔が赤く、着物がとても寝苦しそうだ。

「ユキ」

ペチペチと頬を叩くと眉間に皺を寄せて薄目を開ける。

「よう。」
「高杉さ…」
「寝苦しいだろ、脱がせてやらぁ。」

起きるのも億劫そうなので用件だけを伝えて力の入っていない身体を起こす。普通なら拒否するところだが、頭が働いていないらしくされるがままだ。帯を外し襦袢のみを纏った姿にする。息が荒く、苦しそうなのですぐに寝かせようとするが、ふと抱き締めた状態で動きを止める。
真選組の沖田。アイツは確かユキになついていたはずだ。という事はまた戻ってくるに違いねぇ。
少し身体を離し、まじまじと襦袢姿のユキを眺める。

「……ちっ」

部屋の中を見渡した後に、自分の羽織を脱ぐ。ユキの背中に掛けて腕をキチンと通してやる。
意識がぼんやりとしているユキを寝かせての頭を撫でる。

「次来たときに返せ。」
「すー…」

聞こえていない様子にククッと笑って。持ってきた土産を冷蔵庫に詰め込んで部屋を後にした。



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ふと浮上した意識。目を開けると見馴れた天井。あれ?私どうしたんだっけ。少し顔を動かすと人影が視界にうつる。

「…ん?あ、ユキさん気付きやした?」
「おき…さ…?」
「ちょっと待ってくだせぇ。水持ってきやすね。」

も、申し訳ない。声が掠れてオッサンだった。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出してコップに注いで持ってきてくれる。あれ、こんなの家に無かったよね。もしかして買ってきてくれたんだろうか。
お水を受け取って一口二口。飲みきってふぅと息を吐くと総悟くんがコップをテーブルに置いておずおずと手を伸ばしてきた。

「ちょっと失礼しやす。…まだ少し熱いですけど、頭痛とか寒気しやすか?」
「いえ、気分も大分良くなりました。」
「薬が効いたのかもしれやせんね。」

薬?家にそんなの無かったけど…

「あ、薬は買ってきて飲んでもらいやした。すぐにまた寝ちまったんで覚えてないのかもしれやせんね。」

あ、そうなんですかありがとうございます…ってあれ?なんだこの派手な羽織。こんなの持ってたっけ?いや無いぞ?

「あ、ああああのっ!着替えは、俺が買い物行ってる時に着替えたみたいなんでさァ!…だっ、だから安心してくだせェっ!」
「へ?あ、いえ。」

別に疑ってないよ大丈夫。というよりもこの羽織見たことあるような…ぐぅーっ

「…」
「…くくくっ、すぐお粥温めやすね。」
「す、すみません…」

恥ずかしいっ!赤くなった顔を隠す為に顔をに手を当てる。ふと香ったお香のような甘い香りに覚えがあってクスリと笑う。
今こうして目の前で看病をしてくれている総悟くんをはじめ、結構な人に心配をかけたらしい。申し訳ないと思うと同時に少し擽ったくて緩んだ口元に手を置いた。





リクありがとうございました。最後は総悟くんのような高杉さんのような。微妙な感じになってしまいました。
因みにお粥を作ったのは山崎さんという裏設定。