朝の校門
朝。いつもよりも校門の辺りに人が多いのを疑問に思いながら近付くと、そこに居たのは僕らZ組の副担任のユキ先生だった。
「ユキ先生おはようございます。」
「志村くんおはよう。」
ユキ先生は僕に気が付くと微笑んで挨拶をしてくれる。するとすぐ近くに立っていた同じクラスの土方さんが書類を片手に目を細めて近付いてきた。
「お前は…問題ねぇな。」
「土方さん?あ、そうか。今日は身体検査なんですね。でもどうしてユキ先生が?」
普段は風紀委員の生徒が仕切って行っているのに、今日は何故かユキ先生がいる。不思議に思って首を傾げると、土方さんは何当たり前の事を、という顔で話し始めた。
「どうしてって…俺と吉田が一緒に居るのはいつもの事だろうが。」
「隣のクラスの担当の生徒がお休みだからお手伝いなの。」
「(土方さんの事普通にスルーした…)そうなんですか。」
ユキ先生はZ組の副担任をやっていけてるだけあって、厄介な人達のあしらい方を心得ているみたいだ。土方さんはそれに機嫌を悪くする事も無く、恥ずかしがり屋め、と小さく呟いてニヤリと笑った。
ブブブブブ…という音が聞こえて振り返ると、一台の原付バイクが此方に走って来るのが見えた。
「あり?吉田先生じゃん。何やってんの?」
「おはようございます坂田先生。」
「おはよう。あ、もしかして俺の事待ってたとか?」
「いえ。」
「あ…そ。」
んじゃまた後で、と言ってアクセルを回す銀八先生に土方さんが待ったをかける。
「ぅおーい、待てやそこの銀髪教師。」
「…ん?あー、もしかして多串くん?俺急いでるんだけど。」
「誰が多串だ!ったく、坂田センセーは遅刻の上髪の色がアウト…と。」
「おーい待て待て。言い掛かりも甚だしいんですけどぉ。俺遅刻なんてしてねぇしぃ。」
キーンコーン…
あ、予鈴だ。僕も教室行かなきゃ。
「ほれ、今のが予鈴だろ。」
「あー?よく見ろや。テメェは校門の外に居んだろ。完全に遅刻だ。」
「はぁ?いい加減にしろよ多串くん。君が邪魔してこなければ完全にセーフだったんですぅ。」
どっちが教師なのか分からない会話を繰り広げる二人を置いて校舎へと向かう。
「お、おはようございやす吉田先生!」
「あ、おはよう沖田くん。」
ユキ先生の隣にはいつの間にか沖田さんが居る。沖田さんはさり気なくユキ先生を誘導して、一緒に校舎に向かっているようだ。ユキ先生がくるりと二人を振り返って、少し声を張り上げた。
「二人とも遅刻になっちゃいますよー。」
そう大きな声では無いのに、二人の大人気ない言い争いは瞬く間に終結する。それを面白くなさそうに見る沖田さん。
そんなこんなで僕らZ組の日常が始まります。