お昼休み

「おーい吉田先生、昼飯の時間だぜー。」
「あ、はーい。」

目の前に座っている吉田先生。声をかけるとペンを置いて時計を確認した。そして俺にお礼を言ってへらりと笑うと、鞄から弁当を取り出して持ち、席を立った。

「あり?どっか行くのか?」
「あ、はい。保健室に。」
「保健室ゥ?」

今から飯の時間なのに保健室?なんで…あ、もしかして。

「どっか怪我したのか?」
「あ、いえ。高杉先生の栄養指導があるんです。」
「はあ?」

高杉って…高杉だよな。アイツが栄養指導?え、なに教師っぽいことしてんの?

「一時私パンばかり食べていた時があるんですけど…」

そういえばそんな時期もあったかもしんねぇ。でも確かその頃ってまだ仕事に馴れてなくて色々抱えてた頃だよな。忙しくて作れないって言ってた気がする。

「高杉先生がその時見るに見かねたらしくって、時々抜き打ちでお弁当の栄養指導が入るようになったんです。」
「へぇー。」

アイツがそんな事やってたなんてねぇ。全然想像つかねえんだけど。

「生徒も結構いんのか?」

つっても自分で弁当作ってる生徒なんてほんの一握りだろうけど。あーでもうちのクラスには結構いるか。女子率高そうだよな。高杉って何故か女子生徒に人気だし。いや、別に羨ましくも何ともねぇけど!

「いえ、私だけですよ?」
「…へ。」

若干ズレ始めた思考を戻したのは吉田先生の言葉で。二人きり?

「え、なに、高杉と吉田先生二人きりなの?」
「はい。」
「あの人気のない保健室で?」
「はい。」

昼間とはいえ人のあまり来ない場所に作られた保健室は静かで、病人にはもってこいの場所なのだが。

「ハァァァァア!?え、は、ちょ、…え!?」
「?」
「ちょ、それどう考えても危ねえだろ!あのヤローと密室の保健室に二人っきりなんてェェェェ!」

だってそうだろ!?人の来ないベッドのある保健室で、いい歳の男女が二人きりで居て何にも無い筈が無え!!しかも高杉が吉田先生を気に入っているのは知っている訳で。

「ははは、まさか。職場ですよ?」

いやいやいや、そこがまた良いんだろ。
ケラケラ笑う吉田先生に内心で溜め息を吐く。なんつーか男の理性を軽視し過ぎな気がする。

「それに高杉先生だって選ぶ権利ありますし。」

選んだ結果が吉田先生なんだろ。アイツが栄養指導とかまどろっこしい手を使ってんだ。

「じゃあ、いってきますね。」
「待て」

だから、

「………俺も行く。」

高杉なんかに渡したくなんてねぇから。

「え?」
「俺も行くっつってんの!」
「は、はあ。どうぞ。」

首を傾げる吉田先生。
ったく、今日俺が行かなきゃ食べられてるかもしんないんだからね!?危機感の無い女だな全く!



そう思っていた10分前の俺、お疲れ。いや、今の方が疲れてるかもしんねえ。

「…」
「もう少し野菜入れた方がいいな。」
「そうなんですけど、今ってお野菜高くて。」
「ったく、んな事だろうと思ったぜ。ほらよ、これ持って帰れよ。」
「わあ、こんなに沢山。ありがとうございます。」



「何コレェェェェ!?」

いや、早とちりしたのは俺だけど。勝手に推測したのも俺だけど。でもよぉ、もう少し色気のある状況を予想してたんだけど。いい大人なんだからさァァ!!
野菜を受け取ってホクホクしている吉田先生はきょとんとして、高杉は呆れた顔をしながらこっちを見てくる。

「え、なに本当に栄養指導してんの?此処保健室だよ?」
「?」
「銀八ィ、お前ェバカだろ。」

うっせェェェェ!!