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◎岬先生と私


「ミサキチー」

変な呼び名で俺を呼ぶ生徒。数年ぶりに見た彼女は随分と小さくなっていて、思わずお茶を吹き出したのは記憶に新しい。
中等部の頃鳴海を通じて知り合って以降、俺のアリスを知ってか、会う度に食べ物をせがんでくる。そして、アリスとは違う変わった術を見せてくれるんだ。

「木遁・四柱家の術!」

途端に立派な小屋が建つ。思わず感嘆の息を吐く。

「いつ見てもスゴいですね。ありがとうございます 。助かりました。」
「んー、いいよいいよー。ギブアンドテイクだよー。」

そう言いながら小屋の中に入っていく。うん、道具をしまうだけの倉庫としてだけじゃなくて、他にも色々使えそうだ。

俺の育てる植物は特殊で、顔のついた果物や動き回る野菜を躊躇いなく食べるのは彼女だけだ。自分でも躊躇う時がある。
そんな頼りがいのある彼女が昔、一度だけ酷く弱く、崩れそうな時があった。

−−−−

「…もうすぐ、さ、私いなくなると思う。」
「え?」
「アリスが発動する。多分、この時代には戻ってこれない。」

彼女のアリスは特殊で、入学して以来発動したことはないらしい。自分の意志では発動出来ないと笑っていたのを思い出した。卒業式はまだ先で、何処かで安心していたのに。

「…なんで、」
「分かるんだ、なんとなく。」
「なんで、」
「まだまだやること沢山あるんだけどなー。」

次は多分、ユッキーや柚香ちゃんの運命を変える時。私は、その為に此処に来た。

「なんでっ…!」

あんたが居なくなったら、アイツは…!

「これから先、もっと辛い時期が来る。だからさ、側にいてあげてよ。」

その言葉に目を見張る。涙が溢れてくる。

「ナルがグレないように。大切なもの、見失わないように。」

一番辛いときに側にはいてあげれないから。

「次に会うのは何年後になるんだろ。」

この人を依代にしているのは俺もで。

「絶対戻ってくるからさ、それまで頼んだよ。」

穏やかに笑う彼女の目は僅かに潤んでいて、思わずその小さく華奢な身体を抱き締めた。彼女は震えていた。
次の日、彼女は部屋をそのままに、跡形もなく消えてしまった。言いたいことも言えないまま。

−−−−


あれからずっと、この学園で帰ってくるのを待っていた。ナルは昔とは大分雰囲気は変わったけれど、グレないで育ったし。彼女が残したものは俺たちの中で大きな支えとなっていたんだ。

「どしたのー?」
「いや、昔のこと思い出してた。」

年上だった彼女は、アリスの作用で随分年下になっていて。

「ミサキチ。」
「ん?」

それでもふと見せる顔はやっぱり大人で。

「ありがとね。」

昔よりも小さい身体を、力一杯抱き締めた。



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岬センセーのターン。
主は水遁と土遁の性質を持ったチャクラ。木遁は千手一族の血継限界がいるみたいだけど、そこはトリップ補正。
馨の同期だとユッキー事件のとき学園にはいれないんですよね。今気付いた。取り敢えず、まだ卒業してないってこと。