あれは何時だったか。
私がまだ、このような愛くるしいニャンコの姿になる前だった気がする。
季節は夏。例年にない猛暑が続いていた。小さな泉はすでに干上がり、湖は底が見えるくらいに水が不足していた。アヤカシといえども酒は飲むし腹は減る。流石のアヤカシ達もすっかり参ってしまっていたのだ。
皆木陰に身を隠し、少しでも体温を下げようとじっとしている。そういう私もセミの声に苛つき、身体にまとわりつく自身の毛でさえも鬱陶しく感じた。風なんてなく、ただただ陽の光を恨む。
そんな時だった。
「コッチダョ!」
「コッチコッチ!」
甲高い声が聞こえた。
片目を開けると遠目に小さなアヤカシが2、4、6…一杯いた。大きさは一寸ほどだが、わらわらと集まる光景は暑苦しい。自然と眉間にシワが寄るのがわかる。息でも吹いて蹴散らしてやろうかと考えたとき、他の声が聞こえた。
「ホントだ。水が全然無いねー。」
「ヌシサマ!タイヘン!」
「ミズナイ!タイヘン!」
人の子か。人の子に何が出来る。アヤカシが見える人の子は珍しいといえば珍しいが、この暑さも、日照りも。人の子の手には余る代物だ。
興味を失い、目を伏せる。すると突然の轟音と突風。慌てて目を開ける。
そこに見えたのは、先程の人の子と、
水の龍
その光景はとても幻想的だった。陽の光に水が反射して、キラキラと光る。
思わず、見惚れた。
気付いたら人の子は消えていて、湖は水で溢れていた。
小さきアヤカシどもはキャラキャラと笑い、喜んでいた。