ギィ

錆びた扉が重々しく開く音で全員口を閉ざした。部屋に入ってきたのは素顔を晒したままの男が二人。気持ち悪い笑みを湛えながら近付いてくる。
隣に居る忍足くんが手足を縛られ、自由に動けないながらも体を張って、私をさり気なく隠してくれたのを見てキュンとする。お、男前!!顔だけじゃなかったこの男!跡部くんも言葉の節々や表情に心配の色を表していたし。そりゃあモテるわ!

「お目覚めかい?」
「ひひっ、早速だけどお家の電話番号教えてくれるかな。君達、生徒手帳持っていないみたいだし。」

えぇぇ。まだ調べれてなかったの!?逆にビックリだわ!

「「…」」
「女の子の家は本当に誰もいないみたいだし、ね。」
「「!」」

えええ。こいつらあの話信じたの!?いや、別に嘘は吐いてないけど。

「ご両親は去年事故で死亡。まだ高校生なのに苦労してるんだね?けど悪いね、俺達も切羽詰まってんだよね、色々と。」
「「!?……」」

これはこの世界の私の設定だ。ある日飛ばされた見知らぬマンションの一室で、神とか名乗る馬鹿げた組織からの手紙に書いてあったのだ。此処に連れてこられた理由(面白そうだからとか書いてあって殴りたくなった)とか、通う学校の事とか、お金のこととか、家族のこととか。
でも仕事で遅くなるから家に居ないと考えるのが普通だろ。大丈夫かこいつら。

「で?殴られたくなかったらさっさと言ってくれるかな。」

グイッと顔を近付けてきた男に思わずヒッと悲鳴をあげる。だって気持ち悪い!

「!俺は跡部景吾だ。跡部の名なら調べれば直ぐに出るだろう。」
「跡部?あの大財閥のか?」
「あぁ。」
「ふーん。こりゃ随分大物を捕まえたみたいだな。で?キミは?」
「お、俺は忍足侑士や。番号は…」
「…ん、おっけー。これ、電話してこい。」
「あぁ。」

1人が部屋から出て行き、部屋にはニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべたままの男と私達4人だけになった。

「さーて、暫く暇なんだよな。せっかく女が居るんだし、楽しむのも有りだよなぁ。」

口止めにもなるし。そう言って笑みを深めた男に寒気。

「なっ…!」
「テメェ…!!」

ゆっくりと近付けてくる男に睨みをきかせる跡部くんと忍足くん。それでも縄で縛られ、自由に身動き出来ない二人には出来ることが限られていて。必死になってくれている二人に場違いだが心が暖かくなった。

「まぁまぁ、そういきり立つなよ。お前等も綺麗な顔してるし、後で構ってやるからよ。」

まあ、まずはこの女からだけどな。

そう言って気持ち悪い笑みを浮かべた男の後ろで扉が開き、犯人の仲間達がぞろぞろと部屋に入って来た。あれ、地味にピンチじゃね?