犯人達が目を覚ましたとき奴らは怯えて質問には何も答えなかったらしい。ぶつぶつと呟いたり、ガタガタと震えたり。挙げ句にお前がやったのか、と聞けば素直に認める始末。犯行を認め、事細かに計画を白状するものの、いざ犯行に及んだ後の俺達や吉田とのやり取りの辺りは全く話さない、いや話せないらしい。その部分の記憶がスッポリと抜け、恐怖に染まるのだとか。
何があったのか俺や忍足も聞かれたが、吉田の事は一切話さずに嘘を混ぜつつ話した。俺も忍足も表情に表さないようにするのは容易い事で、警察も納得していたようだった。(ジローは寝ていただけ。)

翌日授業は休んだものの、大会も近いので部活には参加する事にした。其処でも質問責めとなり、深い溜息が出たのも仕方がないと思う。何処から情報が漏れたのか分からないが、氷帝の情報網を甘くみていた。おそらく、既に全校に知られているのだろう。俺達”三人”が誘拐されたという情報が。

事件が発覚したのは日も傾き始めた夕方だそうだ。向日は興奮しながら、宍戸や滝は所々向日の補足をしながら(聞いてもねーのに)話し始めた。

「跡部達おっせぇなーって言ってた時にさ、制服着た男子が一人、コートに入って来たんだよ。」
「そいつは誰だ。」
「知らね。見たこと無ぇなとは思ったけど、俺全生徒覚えてるワケじゃねーし。」
「俺も見ない顔だったなー。」
「俺もだ。」
「まぁいい。で?」
「んで、ソイツなんか急ぎの用みたいでさぁ。榊先生はいますか?ってオロオロしながら聞いてくんの。だから今日はどっかで会議かなんかだから帰ったって言ったら更に慌てちゃってさぁ。」
「あぁ、んで近くにいた俺達も集まってどうしたのか聞いたら携帯を渡して来てさ。」
「そうそう!んで、なんだコイツって思いながらも受け取った携帯の画面見たらさぁ、メール画面が開いてあって!なんて書いてあったんだっけ?」
「平仮名で、ゆうかい、あくたがわあとべおしたり、後は…」
「あー、そうそう!あとは車のナンバーだったよな!それで俺達も流石にただ事じゃないって思って。んで取り敢えずそれが落ちてた所まで案内してもらったんだけど、俺達じゃ全然分からなくてさー。」
「悪ぃとは思ったんだけど、跡部の携帯借りてお前ん家にかけて…」
「んであっという間に解決!っつー訳!」
「…なあ、その男子生徒は何処行ったん?」
「え?あー、そういえば何時いなくなったんだっけ?」
「俺知ってるよ。執事の人が着いたくらいに俺に一言言って帰って行ったもん。凄い申し訳無さそうにしてた。」
「なら携帯はどうした。警察か?」
「いや?その子が持って帰っちゃったみたいでさ。その子と一緒に行方不明なんだよねー。」

そう笑う萩之介を横目に忍足に視線を移すと、同じ事を考えていたようで視線がぶつかった。
おそらく、というか確実にその携帯は吉田の物だろう。吉田自身が携帯を隠してきたと言っていたし。そして、その男子生徒は吉田の知り合い。証拠隠滅といったところだろう。
証拠隠滅と言ってもアイツを犯人の仲間と疑っているわけではない。あの時キレていたのは本当だと思うし、そこまでするメリットが見当たらない。部活に応援に来ていた吉田が”いつも通り”すぎて二度見してしまったのは記憶に新しい。もしかしたら夢だったんじゃねーか、とか柄にもなく考えてしまったが、忍足も苦笑していたのを見ると夢じゃなかったんだと少しほっとした。
いつも通り、今まで通りに過ごそうとしている吉田を見ると、やはり疑う事なんて出来なかった。



そして翌日の今日。
今回の騒動について簡単に説明する為、全校集会が開かれることとなった。生徒がバラバラと講堂へと歩き出すなか、今回の主要人物に声をかける。

「吉田、これ落としたぞ。」
「!あ、跡部くんっ、ありがとう!」

顔を真っ赤にして駆け寄ってくる吉田に不思議な感覚を覚えながら、用意していた手紙を渡す。

「!…跡部くん、これ私のじゃ」

ないよ、と続く前に視線を外す。

「ちゃんと、渡したぜ。」

『生徒会室にて待つ』たった一言書いたその手紙を、その後に話す内容を、彼女は受け入れてくれるだろうか。
講堂に全校生徒が集まるだけでもおそらく30分はかかるだろう。今日の一限目は潰れたなと考えながら一足早く生徒会室に向かった。