うーん、跡部君に呼び出されてしまった。夢とは思ってくれなかったか。彼も周りの目も考えてくれたみたいだし、応じてもいいけど…。

「ユキちゃん…?」
「どしたの?講堂行こうよー。」
「んー、教室に財布忘れた。取ってくるから先行ってて?」
「待ってようか?」
「んー、大丈夫。」

ひらひらと手を振り、教室に向かう振りをする。暫く歩いてから進路を変えて生徒会室へ。それにしても彼(等)が呼んでいるのは”私”だろうか。それとも携帯を回収した”俺”?

少し可笑しくなって笑みを浮かべる。実は携帯を回収したのは私の影分身Aなのだ。この学園のセキュリティーは(私的に)大したことないし、携帯を誰かが見つける可能性は着信音でも鳴らない限りゼロ。因みに私のは常にマナーモードでバイブも鳴らない。…知り合いが少ないんで特に不自由ないんですぅ。というか、自分の居場所を知らせるみたいで自身から音を出すのは未だに慣れない。ちゃんと忍べる忍です。

話が反れたけれど、とにかく携帯を回収したのは私。でも彼らが見たのは男子生徒。つまり、私が変化した姿だ。多少顔を男の子にして、髪を短くしてからフードを被った。その上にジャケットを羽織った。多分、というか絶対校則違反な気がしなくもないけど、赤髪がオッケーならオッケーじゃない?ってことで被った。ほら、後輩コンビに男って間違えられた時もフードだったし。…うん、好きなんだよフード。いやでも姿ばっかり目について顔が覚えられにくいという利点もあってだな。

とか考えているうちに生徒会室に着いた。気配は二つ…。跡部くんと忍足くんだ。ホント仲良いね。周りを見渡し、気配とカメラが無いことを確認。

「『変化!』」

ボフンと煙が上がり、姿を少しだけ変える。”俺”に。
さーて、彼らはどんな面白い反応をしてくれるかな?不都合が起こっても特に問題はない。だって、例の犯人達みたいに幻術をかけて、忘却術でもかけておけば良いだけだもの。
私は異質な存在だって、分かっているんだから。
コンコンと扉をノックする。返事が聞こえたので扉を開ける。

「…しっつれいしまーす。」

ニコッと笑みを携えて部屋に脚を進めた。