「はあ、分かった。俺も退屈してたし、お前等に付き合ってやるよ。」
「「!」」
「じゃあ取り敢えずは俺様の護衛、付き人をやってもらう。マネージャーも任せる。」
「ああ。つーかよ、お前等さっきから俺とアイツを重ねてたみたいだけど止めてくんねぇ?」
「俺様の目は誤魔化せねぇぜ?お前は吉田ユキと同一人物だろ?」
「何処をどう見たらそうなるんだよ。どっから見ても触っても男だろーが。」
「俺らは悟ったんや。俺らの思っとった常識は通じへんってな。」
「何ソレ、馬鹿にしてんの?俺のこと馬鹿にしてんの?」
「で?種明かししてくれへんの?不思議で堪らんのやけど。」
「ん?んー、いいぜ?」

ニヤッと笑った吉田さん。彼女は…彼は?よう分からなくなってきたわ。手を何かの形に組むと声をあげた。

「『解っ!』」

ボフンという音と共に現れたのは女の吉田さん。服装も変わっているのはお約束ってとこやろか。

「おぉーっ!」
「ほお。」
「あ、あのねっ?なんでバレちゃったのかなぁ?」
「吉田さん…?」
「あーん?」
「私、何処かおかしかった…?そりゃあ手は抜いたけど、こんなにあっさり見破られちゃうと少し自信無くしちゃうよぉっ…。」
「その話し方止めろ。」

な、泣かんといてぇぇえ!!と内心オロオロしとると跡部が冷めた目をしてバッサリと切った。流石や、流石空気を読まん男や…!

「はいはい、ちぇっ。あのさー、条件があるんだよね。つーか、取引。私だってボランティアでやるわけじゃないし。こっちは多少なりともリスクを背負うんだからさ。」
「言ってみろ。」

それは俺らも承知の上やったから頷く。他の女子なら側にいられるだけで良いって子も少なくないのに、吉田さんにとってそれは利点ではないんや。やはり彼女は面白い。

「人前で私に関与しないこと。」
「「!」」
「前にも言ったけどファンクラブの人と揉める気はないの。知ってるでしょ?今までの虐めの話。」
「…ああ。」
「私は今まで通りに過ごしたい。面倒はゴメンなんだ。怠いし。私と君たちの関係はこれからも表上はただのクラスメート以下。アイドルとファン。」

確かにそれが今まで通りの関係や。けどそれじゃあ護衛も何もないんじゃ…

「だから、学校で用が有るときは”俺”を呼んで。」
「?どうやって?」
「メールでもお得意の指ぱっちんでもいいけど…。『影分身の術!』」

ボフンと再び煙が上がり、現れたもう一人の吉田さん。えぇ!?どないなってんねん!?

「分身には先に講堂に行ってもらうね。そろそろ私達も行ったほうがいいと思うけれど。」
「あ、あぁ。そうだな。」

流石の跡部も驚いとるようやな。コートの中で青学の菊丸が分身したのを見たことがあるけど、コートの外でやられると驚くわ。生徒会室を出て、少し早足で講堂へ向かう。そろそろ学園長の長い話も終わったやろか。

「他には何が出来るんや?」
「えー?なんだろ?壁歩いたり火出したり?基本なんでも出来るよ。」
「あーん?どういう意味だ?」
「え、そのままだけど。」
「ホンマかいな!?」
「うんうん、忍者だからね!」
「忍者!?お前忍者なのか!?あの、鎌倉時代から江戸時代の日本で、大名や領主に仕え諜報活動、破壊活動、浸透戦術、暗殺などを仕事としていたとされる忍者か!?」
「おおう、予想外な知識きた。うん、根本は似た感じかな。」
「跡部もしかして忍者のファンなんか?」
「日本には忍者が居ると信じていた。」
「昔の話や!」
「だが忍の集まる村が有ると聞いたぞ。」
「あれはテーマパークや!!」
「なんだ、まだ日本にも居るんじゃねーか。まあ生憎まだ屋敷には居ねえがな。」
「あー、海外の建築物って天井高くて忍べなかったんでしょ。日本家屋は天井が低くて天井裏に忍び込みやすいし。」
「吉田さんもそうなん?」
「私は関係ないかなー。だって壁や天井は歩ける訳だし。強いていうなら隠れる場所が有るに超したことはないけど。」

成る程なぁ。あ、講堂に着いた。あれ、気ぃ付いたら男の子になっとる。便利やなぁ。

「じゃあ、面倒だが行くか。」
「おん、俺は舞台袖に居るわ。」
「俺はどうしたらいい?」
「呼んだら来い。全校生徒にお前を紹介する。」
「あ、俺制服来てるけど生徒じゃねぇからな。ダブルでつまんねぇ授業なんて勘弁。」
「ああ。」
「あ。もう一つ条件。」
「あーん?」

挑戦的な笑みを浮かべた彼は俺達を見て言った。

「…楽しませてくれよな?」
「…俺様と居てつまんねぇなんて事有り得ねえよ。」

ガチャリと扉を開ける。学園長の話はどうやら終わりかけのようで、室内は少しざわついている。控えていた先生が跡部の姿を見つけると、少しだけ説明をして跡部にマイクが渡された。今からあの事件の詳細が語られる。そして、彼の事も。ニコニコと微笑みながら隣に控える彼が余裕そうで、逆に俺が緊張してきてしもた。