「…という訳だ。そして、今日は俺様の付き人を紹介したいと思う。今回の事件を解決に導いた奴でもある。来い。」

パチンと指を鳴らす跡部くんに促される。なんか、想像以上に面白いな。指を鳴らされて呼ばれるの。ブフゥッと小さく吹いたら忍足くんに見られた。いや、だってしょうがないじゃん。私コートに行ったら笑い死ぬかもしれない。

「はじめまして。今回の事件で多大なご迷惑、ご心配を掛けてしまった景吾坊ちゃま、の付き人の吉田です。」

わははと主に男子生徒からの笑いと跡部くんからの痛い視線をいただいてニコリと笑う。

「今回の件もあって、この学園のセキュリティーの甘さを皆様が感じたことと思います。事実、今回の犯人は搬入車を使った犯行でした。」

そう、実は搬入車の職員が犯人のうちの一人だったのだ。会社自体に過失はないものの、取引先全てを洗う必要性が出てきた。

「この学園には可愛らしいお嬢さまが沢山いらっしゃいますから、狙いたくなる気持ちも分かりますけどね。」

少し茶目っ気を見せながら微笑むと女子生徒が惚けた声を漏らす。

「皆様が安心して学園生活を過ごせるようにと、生徒会長である景吾様は精一杯力を尽くすと仰いました。そして、俺はこの学園の生徒では有りませんが、そんな景吾様のサポートを微力ながらやらせていただく事になりました。」

先程聞いたのだが、なんと既に学園の許可は取ってあるらしい。流石仕事が早いね跡部様。というか、元々逃げれないように幾つか手は打っていた、ということだろう。まあ逃げ切る自信はあるけど。

「本当は皆様、特にお嬢さま方のお力になりたいのは山々なんですけど…。」

跡部くんがマイクを使わずにあーん?と言ってきたので皆に分かるように顔を向けて苦笑してみせれば会場も小さな笑いに包まれる。気を取り直して少し元気に話し始めた。

「ということで俺を校内で見かけることがあると思いますが、邪険にしないで接していただけると嬉しいです。宜しくお願いします。」

最後に再びニコリと笑って頭を下げて一歩下がる。皆が拍手をしてくれたので、生徒受けはまあまあだな、と顔には出さずにニヤつく。跡部くんが少し怪訝な顔をしながらマイクを取った。

「…以上だ。質問が有る奴は俺様に聞け。」

再びパチンと指が鳴らされて今回の集会が終わる。再びざわついた会場を後目に跡部くんの後について舞台袖に引っ込む。舞台袖で待機していた忍足くんが苦笑した。

「良かったで吉田さん。」
「マジで?紳士だった?」
「紳士っちゅうよりは誑しやったけどな。誰かと思ったで。」
「敵を作らない為の世渡り術と言って欲しいね。」
「あの坊ちゃまは良かったで?」
「だろー?」
「あーん?んな必要は無かったと思うがな。」
「何言ってんの。跡部くんとは昔からの親しい関係だって事にしておかないと。ぽっと出の奴なんか今この学園では信用されねーよ。」
「せやな。なぁ、呼び捨てにしてもええ?ちゅうか、男と女で呼び方変えたいんやけど。」
「じゃあ俺も変えよ。忍足…だと変わらねーしな。侑士って呼ぶわ。」
「おん。なら男ん時は吉田な。女の子ん時は名前で呼ばせて貰うわ。」
「人前では止めろよー?」
「分かっとる分かっとる。」

「…おい。」
「「なーに/なんや?」」

ふてくされた跡部くんを二人でニヤニヤしながら振り向く。跡部くんは眉間に皺を寄せてコッチを睨んでいる。

「…ちっ、行くぞ。来い………ユキ。」

スッと私達を通り越してスタスタと歩いて行ってしまう跡部くんを見て二人して顔を見合わせ、プッと吹き出す。

「…ちっげーだろ”景吾”!!」
「せやで。早速跡部が間違えてどないするんや。」
「うるせぇぞ、サッサと来い。」

少しだけ駆け足で景吾に追いかける。…楽しくなりそうだ。