教室にて例の3人を一瞥し、手元の本に視線を落とす。早々に行われた席替えにて獲得した窓際の一番後ろ。この席は教室を見渡すにはちょうど良い場所だった。
暖かい日差しに思考能力が低下しつつも、昨日遅くまで目を通していた書類について思い出していた。
神山と井崎は氷帝の中等部だったために、顔と名前くらいは知っていた。なにせ、我がテニス部よりも野球部に夢中らしい希少動物だ。
いや、野球部を馬鹿にしているわけではない。実績もそれなりにあるし、鍛錬だって怠っていない良い部であるといえる。けれど、氷帝学園ではテニス部レギュラーのファンである事は当たり前。話し掛ければ頬を染め、歓声を上げるのが恒例となっているのだ。
その希少動物の輪の中にすんなりと入っていったのは、外部からこの春、氷帝にやってきた吉田ユキだ。
吉田と初めて目が合ったとき、顔を真っ赤に染め上げて目を泳がしていた。この反応は恒例のことであったし、ある意味当たり前だと思っていた。だから暫くした頃、あの2人と一緒に居るようになったのが不思議でしょうがなかったのだ。
鐘が鳴り、数学の授業が始まった。教科書とノートを開いて前の席の吉田を眺める。コイツは基本、黒板の文字を淡々と写し、暇になったら空を眺めている。難関といわれる外部受験に合格した奴なんだから頭は良いんだろうが、それにしてもいつも上の空だ。書類上特に可笑しな点はなく、中学の頃の部活も文系。俺のように、何でもそつなくこなす事が出来る奴も居るだろう。けれど体力測定の結果を見る限り、それも微妙なところだろう。女子の平均だ。
そのごく普通の身体能力の吉田と井崎、それに運動神経の良い神山を入れたところで、Hクラスのあのメンバーに勝てる見込みはない。けれど彼女達はそれをやってのけた。自然に口角が上がる。
面白いじゃねーの。
その謎、俺様が暴いてやるぜ。
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