彼女とお茶会
「お、いたいた!バカ殿ー!」
「なっ!?ジュダル!?」
アリババくんたちの修行も順調に進んでいたある日、執務をサボっ…んん、休憩中に突然空からマギであるジュダルが現れた。周りにいた食客達も驚いたように空を見上げた。
「何しに来たんだ!」
「んー?そんなん決まってんじゃん!」
「ちっ。」
くそ、近くにいた奴に八人将の誰かを呼びに走らせる。しかし間に合うか…?
「戦いに…って言いたい所だけど今回は疑問を解消しに来ただけなんだよ。イマイチ報告聞いても分からなくてさぁ。」
…なんだ?
「あーんなボロボロの状態でさ、どうやってもう一匹倒したんだよ?」
バルバットの事だろうか。そしてユキの事、か。しかし此処でユキの事を知られるのは得策ではない。どうしたものか…。
「シンドバッドが殺ったんじゃねーだろ?サッサと教えろよ…」
「シンドバッドさーん。」
ユキが小走りで駆け寄ってくる。どうしてこんな時に…!?
「ユキっ!来るな!」
「あ?」
ジュダルがゆっくりと振り向く。くそっ!!ユキが見つかってしまった。どうする。
「シンドバッドさん、ケーキが焼けましたよぉ。そろそろお茶にしましょー?」
「あ、ああ。しかし、今はそれどころじゃないぞ。」
「んん?トイレ?」
「そうじゃない、そうじゃないぞ。」
というかジュダルが動かない。?なんだ?俺からは顔が見えないのでジュダルが何を考えているのかが分からない。
「お、前…」
「んー?」
振り返ったジュダルは目をまん丸にしてユキを指差し、口をパクパクとしていた。
「?君もお腹空いたんですかぁ?沢山作ったんでぇ、一緒に食べますかぁ?」
違う、違うと思うぞ。思わず頭を抱えた。ふとジュダルを見るといつもと違う表情で目を疑った。
真っ赤だ。ジュダルが、あのジュダルが顔を真っ赤にして立ち尽くしていたのだ。
「いい天気ですよねぇ。此処でお茶にしましょうかぁ。」
「おっ、俺も手伝う…!」
「んん?そぅですかぁ?ありがとうございますぅ。」
宮廷内に机や椅子を取りに行くらしいユキの後ろをピョコピョコと着いていくジュダルに俺の視線は釘付けだ。身体が動かない。ど、どうなっているんだ!?
「シン!!」
「お、おぉ、ジャーファル…。」
「一体なにが!?先程食客の方が凄い剣幕でやってきて…!」
「あ、あぁ。だろうな。俺が頼んだんだ…。」
「?どうしたんですか?」
「王っ!」
「何があったんですか!?」
すると次々と現れる八人将の数人。しかし俺の視線は一点に釘付けだ。ユキ達が歩いていった方向に。
「シン!」
「あ、ああ、すまん。ジュダルが来てるんだ。」
「ジュダル!?」
「ああ。」
「そ、それで彼は何処に!?」
「いやぁ…。」
だって、あれはどう見ても…。
あ、どうやらユキが戻ってきたようだ。彼女は大量のケーキを持ち、ジュダルはドデカイ樽を抱えている。
「あれぇ?皆さんお揃いで。丁度良かった、今からお茶にするところなんですぅ。皆さんも一緒に如何ですかぁ?」
「「「え?」」」
「あ、ジュダルくん。ありがとうございますぅ、その辺に置いといてくれますかぁ?それからコレ、少し持ってて貰えませんかぁ?」
「お、おうっ!」
「『木遁の術!』」
ユキの摩訶不思議な術で(魔法ではないらしい)地面から生えた机と椅子。そこで始まったお茶会。メンバーは俺(シンドバッド)、ジャーファル、ピスティ、シャルルカン、そしてユキとジュダル。…なんだこのメンバー。
青春を目の前で繰り広げているジュダルと、それを難しい顔で見ているジャーファルとシャルルカン。ピスティは始終ニヤニヤしていたし、ユキは相槌を打ちながらケーキを頬張っていた。…なんだコレ。
その後お茶会は何事もなく終わり、ジュダルも何もせずに帰っていった。…いや、ユキに手を振りながら帰っていった。ジュダルが居なくなってから暫くしてジャーファルとシャルルカンが力一杯空に向かって塩を撒いていたのは別の話だ。
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