「あ…」
「…こんちは。」
「いらっしゃいませ。」

彼女を街で見かけてから3日が経った。
あの後、あれ以上にチョウジに詳しい事を聞くことは出来ず、結局もやもやとした気持ちを残しながら任務をこなした。俺が彼女の事を知らないのは当たり前なのに、それを歯痒く感じて。
知識としては知っていたがいざ体験してみると、恋っつうのはめんどくせーモノだと溜め息が出る。それでも休みの今日は自然と足が団子屋に向かっていて。それに気が付いた時思わず苦笑をしてしまった。

「え、と、醤油団子一つお願いします。」
「あ、はい。かしこまりました。」

彼女の後ろ姿を盗み見ながら、この後の事を頭の中でシミュレーションする。持ってきた巻物を広げて眺めていると、コトリと音がして顔をあげた。

「お待たせしました。」
「ありがとうございます。あの、今日って仕事の後空いてますか?」
「え、あ、はい。」

目を瞬いてから頷く彼女に安心する。もしかして断られるかもしれねぇと思っていたからだ。治安は悪くねぇっつっても柄の悪い連中はやっぱり居るし。
彼女からしてみれば、俺は得体の知れない奴だろうしな。ナルトやキバのように愛想が良いわけじゃねぇし、目つきだって悪い。最初店に来たときなんか(彼女は覚えてねえだろうけど)、純真無垢そうなお嬢様(とその父親)を連れてたし。あれ、俺結構得体知れねえな。

「仕事何時までですか?」
「あ、えと、五時です。」
「それじゃあ待ってます。」
「え、でも」

此処までの少ない会話で気付いた事は、彼女は随分と押しに弱いということだ。遠慮なのか本当に渋っているのかは定かではねえ(…嫌がってねえよな?)が。顔見知り程度の客にこんな事言われても困るだけだろうけど、それでも。この面倒臭がりな俺が、アンタの事を知りたいって思っちまったから。

「仕事頑張って下さい。」
「あ、はい、ありがとうございます…」

眉を下げて苦笑気味に。それでも了承してくれた彼女に、ほんの少し浮上した心。自然と緩んだ口元に手をやり、そっと彼女から視線を反らした。