あれから週に数回任務の無い日や空き時間に文字を教えることになった。

「そこはこう…」
「あ、はい。」

彼女の故郷の文字と木の葉で一般的な文字は根本が似ていた。そのため、書くのはともかく、簡単な書物なら読むようになるのは早かった。
吉田さんは最初にも言っていたが、手紙を寄越したあの男の告白は断ったそうだ。それにはひと安心したものの、俺の好意をどう思っているんだろうと不安を抱く。嫌がられてはいないとは思うが、イマイチ近付けた気がしないんだよな…。
それでもこの二人で過ごす時間を手放すのが惜しくて、毎回最後に一方的に約束を取り付けているのが現状だった。しかし、それも長くは続かないというのも分かっている事だった。

「…こう、ですか?」
「はい。」

伏せられた目。あー睫毛長ぇ、なんてベタな事を考えて。さらり流れる艶のある髪。根本の色が違うから、染めていたのだろうか。元々は俺と同じ黒らしい。
彼女は黙々と俺が書いた文章を半紙に写していく。俺だって字が綺麗な訳じゃねぇから戸惑ったけれど、吉田さんがいいって言うから。
名前を聞いたときの彼女の様子から、偽名とも考えたがそんな事する必要性を感じねぇし。なにより彼女の手は、瞳は、俺達忍とは違ってキレイだった。

「で?」
「…あ?」

いのに引っ張られてやってきた甘栗甘。ニヤニヤとしながら身を乗り出してくるいのに、お茶を一口飲んで溜め息を吐いた。

「あれからどうなったのかなって思って!どこの誰かくらいはわかったんでしょうねぇ。」
「ああ。」
「ホントにぃ!?えっ、どこの誰よ!?私の知ってる子!?」

…どうだろう。俺よりもチョウジのほうが先に名前を知っていたわけだし、いのも俺が知らないだけで知ってるのかもしれない。俺よりも先に、というだけでなんとなくモヤモヤしてしまうのだから、俺は相当彼女を独占したいらしい。

「さあな。」
「ええー、気になるじゃなーい!」
「めんどくせェ…」

はあと溜め息を吐けば、いのは少し大人びた笑みを浮かべる。

「でもま、良かったわねシカマル!」
「あぁ…ん?」

店の前の道に、吉田さんの姿を発見する。視線に気がついたのか、キョロリと視線を辺りに巡らせた彼女とパチリと目が合った。

「どうしたのシカマル。」

目が合う、それだけで高鳴る心臓。小さく頭を下げれば、彼女もぺこりと頭を下げてくれ、そのまま行ってしまった。

「も、もしかして…」
「…」
「ちょ、早く追いかけなさいよ!」
「あ?」

妙に切羽詰まった様子のいのに眉を寄せる。

「絶対勘違いするわよ!!」

そう言われてこの状況を再確認。甘味処でいのと二人。関係としてはただの幼なじみで同期だけと、一応俺は男で、いのは女。

「…」

思わずがたりと立ち上がって、急いで彼女を追いかけた。