いのに促され勢いよく店を飛び出して彼女を追いかけたものの、何処か店にでも入ってしまったのか、彼女を見つける事は出来なかった。(気配は人混みに紛れてしまった)
そもそも、彼女を追いかけて俺は何と言うつもりだったんだろうか。いのは幼なじみだから誤解するなって?俺にしては強引に攻めていて当然彼女も俺が口説いているという事も分かっているだろうが、未だ告白も何もしていないのに可笑しな話だと冷静になってきた頭で考える。
駆け足だった歩みを止めて一つ溜め息をー吐く。頭の後ろに手をあててこれからどうするかと考えていると、背後から気配を微妙に消しながらニコニコと近付いてくる人物に気が付いた。
「奈ー良くーん♪」
「…仲野さん」
話し掛けてきたのは一人の先輩だった。
名は仲野さん。仲野さんは俺が中忍の時に何度か組んだ事のある先輩だ。大ざっぱな性格で、いつもにこにこというよりもにやにやとしている人だ。噂話が大好き(そのおかげか諜報に長けている)で、面白い事も大好きなこの人。大抵の噂の発信者はこの人だと思われている。
「最近よく一緒に居る人って彼女ー?」
にやにやする仲野さんに溜め息を吐く。最近よく、なんてユキさんの事だろう。他に居ねえし。
そりゃ恋仲に見えたのなら嬉しいのだが、現状は否定の言葉しか言えねえ。実際、まだ違う訳だしな。
「違いますよ…。」
「なんだ違ぇの?てっきり砂のあの子との三角関係が勃発するのかとワクワクしてたのに!」
「また…、なんであの人なんすか。」
いのもそんな事言ってたなと眉間に皺を寄せるが、それさえも楽しいようで先輩は笑みを深めた。
「そりゃ、あの子が来る度に案内役任されてるのが君だからだろ?」
「それはただ馴染みだからで、全然関係無いっすよ。」
「ふーん、なんだつまんないなぁ。」
「はあ、すんません。」
この人は俺に何を求めてるんだろうか。まぁ予想が容易につくから其処は追求などしたりしないが。
「それはそうと、あの人…吉田さんって半年?もっと前?に里に来た人だろ。」
「え…」
まさかの情報に動きを止める。なんでこの人が彼女を知ってるんだ。
「あはは、そう睨むなって。俺あの日偶々正門の番しててさぁ。」
「…」
「身一つで来たんだよ彼女。荷物は賊に奪われたっていう説明のわりに身なりは綺麗でさ。」
俺の知らない彼女の昔。昔っていってもそれほど前の話ではないが、兎に角そんな話をこの人から聞く事になるなんて。
「でもまぁ、チャクラは無いみたいだったし、身体も一般人だったから、そのまま火影様に報告してから数日の監視。特に動きも無かったからそれで終わりだったんだけど。」
俺が木の葉の忍だって自己紹介したとき、彼女はどう思ったのだろうか。
きっと彼女は気付いていた。自身が怪しまれていた(今もかもしれねぇ)事を。監視されていたという事を。
そしてそれを仕方がないと、当然だと思っていたんだ。
「あの人、結構得体が知れないんだよな。」
あの困ったような笑みに、彼女はどんな気持ちを隠したのだろうか。
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