トリップした時期も時期(偶然見かけた彼らは17歳くらいだった)だけど、関わらないって決めた。だから働くのも定番の甘栗甘じゃなくて街の隅にひっそりとある甘味処にした。

来たのは半年前。突然門の外側にいた。なにがなんだか分からなかったけれど、取り敢えず生きるために木の葉に入る事にした。荷物もなかったから道中で盗まれたと嘘をついて。
手を見られ、軽い身体検査をされた。夢小説のように火影に会うなんてことはなくて、取り敢えず質屋へ。換金出来るものなんてなくて、(ブランドの時計なんて無意味)思いついたのは首元に付けていたネックレス。初給料でご褒美に買った宝石は本物、そんなに値は張らないけど思い出の品を売って。

そうして生きてきたこの半年。優しい女将さんに一から仕事を教わって。アパートの大家さんとお茶をして。週に一度、買い物ついでに質屋をのぞいて。未練タラタラな自分に苦笑いをしながら家に帰る。そんなありふれたようで体験しているのは私一人だろう平凡な日常。

週に数回、朝にアパートの前を箒で掃く。
来て早々に住ませてくれと言った私に、優しく笑いながら自身の部屋に泊めてくれた大家さん。掃除は明日一緒にやりましょうと微笑んだ大家さんに不覚にも涙ぐんだ。
お手伝いにも満たないけれど、無理せず起きれた日に外を掃くようにしているのだ。

「おはようさん。」
「おはようございます。」

まだ朝早いからか、道行く人は疎ら。人の良さそうなお爺さんやおばさんが笑顔で挨拶してくれるので自然と私の顔も綻んで挨拶を返す。

「今日はええ天気になりそうなやぁ。」
「ええ本当に。お仕事頑張って下さいね。」
「はは、おーきに。お嬢ちゃんもな。」

おじさんを見送って空を見上げる。
日中よりも冷えた空気を肺一杯に吸って、目を細めた。今日も私は、この木の葉で生きる。