いつか利用できるかも、という考えで春千夜から深愛に連絡をした数日後、伍番隊の集会に向かう途中で深愛を目撃する。
こっちから連絡したんだし声かけるべきか?
いやでも深愛さんそこそこ前歩いてるし、別に声掛けなければバレずに終わるよな…。
なんて悩んでいると、向かい側から歩いてきた男の2人組が深愛に声をかけた。雰囲気的にナンパっぽい。
まぁ…何も知らなければパッと見は普通の女子高生だもんな。そこらのより整ってる方だろうし。よく見るとちょっとピアス多いしタトゥーも入ってるらしいけど。
…つーか、すげぇシカトしてんのにあいつら全然諦めねぇな。シメるか?
そう思って、深愛さんたちに近づこうと歩く速度を早めた時だった。
深愛さんが立ち止まったかと思ったら、男のうちの1人が道沿いの壁にもたれて気を失った。
何が起きた?と思って見ていると、気を失った友人を見て驚いて固まっているもう1人の男が、その場に腹を抱えて蹲った。
蹴り…か?くそ…気失った方の男に気を取られてこっちの男は見てなかった…早すぎる…!
「…しつこいんだよ、しね」
深愛さんのいかにも機嫌の悪い声が聞こえたと同時に、バキッという生々しい音と男の悲鳴が響いた。
……う、腕…折ったんだ…今の一瞬で…。
蹲った男の肩に自分の脚かけて、まるで枝でも折るみたいに、躊躇なく軽く折ってた…。
深愛さんが男の肩から脚を下ろす。
呻き声をあげ、痛みで今にも気を失いそうな男を、小さくため息をつきながら見下ろす。
「二度とナンパなんてすんなよ」
さっきよりは落ち着いたトーンで捨て台詞を吐いて、何事もなかったかのようにスタスタと歩き出す深愛さん。
僅か3分程の出来事だった。
ハッとして、思わず走り出していた。
「…深愛さん!」
「ん…あれ、三途くん?」
「どうやったんすか!?」
「え…何が?」
「さっきの男たちっす」
「え"っ」
「早すぎて何が起こったかわかんなくて…」
「…ま、待って三途くん、どこから見てたの…」
「ナンパされるちょっと前からっす」
「全部じゃん…まじか…」
そう呟きながら顔を覆って俯いた深愛を、不思議そうに見る春千夜。
「…どうしたんすか?」
「……はずかしくてしぬ」
「えっ」
指の隙間からチラッと自分を見上げた真っ赤な顔と目が合う。
その瞬間、心臓がギュッと握りつぶされそうな感覚に陥った。
…なんだこれ!?心臓うるせぇし痛ぇ!
「…さ、三途…くん?大丈夫?どした?」
「な、何でもねぇっす、急いでるんで…」
それだけ言って、「え?」って戸惑ってる深愛さんの声を背に、来た道を走って逃げる。
逃げるという表現は嫌いだけど今回ばかりは認めざるを得ない。
…まじで、なんだよこれ、意味わかんねぇ。
こんなタイミング、誰が予想した?
(恋に落ちるきっかけなんて予測不可能)