三途に謎の逃げ方をされたのがショックでとぼとぼと帰宅した深愛。
怖がられたかな…やべぇ奴だと思われたかも…。
せっかく連絡くれて仲良くなれるかもと思ったのに〜!
…ナンパ野郎共め。お前らのせいだぞ(違う)
でも…最後のあの表情はなんだろ…?
三途くん、マスクしてるから目元しか見えなかったけど、顔が真っ赤だったような…。
……………。
…か、可愛かった!!
めちゃくちゃ可愛かった!!
照れてるのバレないようにキレてる時の竜胆と同じ可愛さ感じちゃったなぁ…。ん〜、マスク無しでも見たい…!
あまりの興奮に机をバシバシ叩きながら突っ伏していると、ふと竜胆の気配を感じた。
「…なに一人で騒いでんだ?」
「竜胆おはよ。もう昼過ぎだけど」
「おはよ。兄ちゃんは?」
「まだ寝てるよ」
「腹減った」
「パスタな」
「えー、ばあちゃんの飯は?」
「昨日食べちゃったのはどこの誰でしょうねぇ…?」
「…パスタ食べたいです」
全力で目を逸らす竜胆を睨みつけてわざとらしく舌打ちをしてからキッチンへ向かう。
2人分のパスタを作ろうとしていると、まだ目が開いていない蘭ちゃんが起きてきた。
「あら、蘭ちゃんおはよ」
おはようが返ってこないまま、無理やり体の向きを変えられ抱きしめられる。
「…深愛おはよ」
「はい、おはよー」
ぎゅーっと抱き締め返すと満足そうに伸びをしてリビングのソファへと向かっていく。
「蘭ちゃんもパスタでいい?」
「うんー」
おじいちゃんとおばあちゃんは結婚記念日の旅行に行っていて不在。
病気が進行しているおばあちゃんにとって、きっとこれが最後の旅行になる。
おばあちゃんを蝕む病気が、私を余計にイライラさせるんだ。どこにこの怒りをぶつけていいのかわからないから。
ちなみに、蘭ちゃんと竜胆は大切な家族だけど、この家に住んでいたことは一度もない。
実家を出た後は、3人で稼いだお金で、高校生のくせにタワマン住まいをしている。
私の情報ありきの稼ぎだってことで一応私も合鍵を貰っているけど、割と豪邸レベルの広い実家があるのに行く用事もなくて…2人の世話くらいでしか行ったことがない。
そんな訳で2人はたまにしか泊まりに来なくなったけど、祖父母の旅行中は私一人じゃ心配だからと言ってうちに泊まりに来ている。ちなみに言うと頼んではいない。
頼んでない上に、おばあちゃんが私のために作り置きしてくれた数日分のたくさんのおかずは、昨日の夜に竜胆が食べきってしまった。
「やっぱばあちゃんの作るメシが世界一うめぇ!」
じゃねぇんだよ。私のごはんだぞ。
そんなことを思いながらパスタを作っていると竜胆の携帯が鳴って、ダルそうに電話に出ているのが見えた。
どうやら取り巻きの誰かからの連絡っぽい。
竜「…は?俺じゃねえよ。
あー…どうせ深愛だろ…。おー、処理しといて」
あ…やべ…。これは多分バレたな…。
竜「おい、深愛お前…またナンパしてきた奴の骨折ったろ」
「………」
蘭「ぶはっ、またやったの?」
竜「1人は鼻潰れてて、1人は肩折られて重症だってよ」
蘭「うわぁ…ばあちゃんにバレたら3日は正座で説教されそうだな」
「……だってしつこいんだもん…」
竜「俺らがいねぇ時はやめろって兄ちゃんに言われたろー?」
「………」
居心地が悪くて拗ねながら料理をしていると、蘭ちゃんがキッチンのカウンターの所まで来た。
うわ、これはお兄ちゃんモードの蘭ちゃんの顔だ、お説教される。
「深愛の強いところも大好きだけどさ、もし俺らみたく年少に入れられるようなことあったら、俺らじいちゃんばあちゃんに合わす顔ねぇよ。
わかるだろ?あんま2人に心配かけんな」
バツが悪すぎて蘭ちゃんの顔は見られない。
「何かあっても守れないから、一人でいる時に喧嘩はすんな」っていうのは、蘭ちゃんから何度も口酸っぱく言われていたことだ。
感情に任せて言いつけを破ったのは私。
三途くんに見られてしまったのはバチが当たったんだな…。
「…わかってる、もん」
「ならいいよ。皿出すねー」
「ぇあ、ありがと」
「メシ食ったらどっか遊びに行こっか」
「え…」
「竜胆どっか良いとこ探しといてー」
「うぃー」
落ち込みつつも急な提案に驚く私の頭を撫でて、他の人は見たことないんだろうなっていうような優しい顔で微笑んでくれる蘭ちゃん。
ずるいなぁ…バレてるんだなぁ…私がおばあちゃんの病気のせいで、ずっと不安でイライラしてること。
なんで何も言ってないのに、何でもバレちゃうんだろう。
お兄ちゃんの顔してる時は本当に優しそうなんだよ。普通の女の子ならイチコロだと思う。まぁ…残念ながら他の人にはそんな顔は見せないんだけど…。
…蘭ちゃんに、悲しい顔させないようにしないとな。
こう見えてお兄ちゃん子なんだよ、私。
こう見えても反省してるんですよ
(ちょっと繰り返しちゃうだけです)