春千夜と仲良くなれた数日後、深愛の彼氏がボコボコにされた姿で発見され意識不明の重体だと、兄弟の取り巻きの1人から竜胆へ連絡が入った。

私より弱いの知ってたし、別に好きで付き合ったわけじゃないから怪我しようがまじでどうでもいいんだけどなーって思いつつも、意識が戻ったと連絡が来たので仕方なしに一応お見舞いへ行く深愛。


「うわ、ボロボロじゃん…よく生きてたね。
…で?誰にやられたの?」

「知らねぇ奴だよ…特服も着てなかったし…」

「ふーん。見た目は?」

「あぁー…っと、ピンク髪のロン毛だったな…
顔はマスクしててわかんねぇけど、一瞬女かと思った」

「……なるほどね?その人さ、黒いマスクしてて、たれ目でまつ毛が長かったんじゃない?」

「え、あぁ…そうかも…」

「ふーん」

「…え、深愛の知り合いか…?」

「………」


ひどい怪我で病院のベッドから動けなさそうな彼氏のギブスを軽め(当社比)に叩き、ぐあぁっという叫び声を上げるのを冷めた目で見つめる。


「あんたをボコボコにしてくれた人に感謝しな」

「は、はぁ…?何言っt…」

「もし、あんたが浮気してることを私が蘭ちゃんと竜胆に言うのが先だったら、今ごろ死んでただろうから♡」

「ひっ…」

「私に隠し事できると思った?」

「…み、深愛っ…」

「私が最初からあんたを好きな訳じゃなくて良かったね」

「え…」

「もし好きだったら私がボコボコにして、二度と女遊びが出来ないよーに、ここ、切り取ってたよ♡」


そんな気ないけどなって心の中で思いながら男の股間を指さして満面の笑顔でそう言うと、男はまた「ヒィッ…!」と情けない声を出した。

だっせぇ男。しつこくて面倒だったからとはいえ、やっぱり付き合ったのは大失敗だったなー。

こんなのが初めての彼氏だなんて確実に私の人生の汚点だわ。ノーカンにしたい。
間違ってもキスとかさせなくてまじ良かった〜!せめて自分の身体は大切にしないとね。初めては好きな人に!

…さてと。今回の犯人にお礼を言わなきゃな。


━━━━🎶

…やっっっべー…深愛さんからだ…。
あれから数日経ってるし、確実にもうバレてるよな…。


「…はい」

「やぁやぁ三途くん、今から会える?」

「…あー、っと、これから隊長のところに…」

「じゃあ今ちょっとだけ話そうよ」


電話越しとは別に直接声が聞こえた気がしてバッと振り向くと、携帯を耳に当てつつ俺に向かって笑顔で手を振る深愛さんがいた。…笑顔が怖い、気がする。


「よ!三途くーん」

「な、なんでここに…」

「忘れた?私、天才ハッカー」


そう言いながら深愛さんが指さしたのは監視カメラ。
な、なるほど…。やっぱ逃げんのは無理だよな…。


「…ありがとね」

「………は?」

「あのクソ男、ボコボコにしてくれて」

「えっ…」

「あいつが浮気してるっていつ知ったのー?」

「ぇあ、や、たまたま…見て…」


思わず答えたが、状況がいまいち飲み込めない。
ありがとうって言われた…?彼氏を半殺しにしたのに?

…つーか、知ってたのかよ…あの男の浮気のこと…。
だったらなんでそんな男と付き合ってんだよ?あぁいう男を選ぶようなバカじゃねぇだろあんたは。


「これでも情報屋なんでね、女遊びばっかしてんのは知ってはいたんだけども」

「じゃあなんで…」

「どうでもよかったんだー。好きで付き合った訳じゃなかったし。あんな奴の骨折っても楽しくないしなって」

「え…好きじゃ、なかったのか…」

「だって私より弱い男だよ?」


そう言ってにやりと不敵な顔で笑った深愛さんは、いつもみたいに楽しそうだった。


「あっちも多分、灰谷兄弟に近づくのが目的だったんだと思うんだけどさ、まじでめちゃくちゃしつこくて…!
もう面倒くさ〜ってなって付き合うって言っちゃったんだよねー…まじ失敗したわー」


「蘭ちゃんにもすごい怒られたし反省してるんだけどさ〜」なんて苦笑いで自虐しながらも、

「でも1本くらい骨折っときゃ良かったかなー」って、相当やばい事をまるで駄々を捏ねるように膨れ顔で言う深愛さんに、思わず笑いそうになってしまう。

…ほんと、変な人だな。


「まぁ何はともあれ、三途くんがボコボコにしてくれたおかげで色々スッキリしたよ!だからありがとね!」

「…うっす」


本当はたまたま見た、なんて嘘だ。
小物の雑魚のくせに深愛さんと付き合ってる事がムカついて後をつけてたら、雑魚のくせに調子乗って浮気してたからついでに半殺しにした。

…なんてことは、絶対にバレないようにしよう。
この人にバレたら嬉々として喜ばれるに決まってる。



ヒーローには秘密がありました
(なお、ムカついた理由は未だ不明である)

 
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それではまた、違う世界線で。