ロックンロールと侮る勿れ
『わたし、27で死にたいの』
「へぇ……」
ギターを爪弾きながら気のない返事を寄越す男をちろりと横目に盗み見ると、意外にも男は真っ直ぐとこちらを見詰めていた
『自殺もいいけれど、もっと違う何かで死にたいの』
「例えば?」
珍しく作曲中に私の相手をしてくれる男に目を瞬かせつつも脳を働かせてありとあらゆる死因を思い出す
『……腹上死が、いいかもね』
そう呟くと、男は、恋人は、ネズは、はっと笑った
「俺も、お前となら悪くねぇと思っていますよ」
今度はこちらが、はっと笑う番だった
『うそつけ』
彼の最愛の妹を思い描きながらそう言うとネズはギターを置いてずい、と私との距離を詰めてきた。鼻先がくっついてしまうほど近くなるとぎょろりと窪みに嵌るような眼球が私を射抜く
「なまえに関して"俺"はいつだって本気ですよ」
するりと腰に回された腕に逃がさないとでも言うように力が込められる
強い瞳に思い出されるのは彼の歌。いつだって彼はロックを口ずさんでいた
「馬鹿みてぇな迷信も、他人任せの身勝手さも
なまえとなら、悪くない」
ロックンロールと侮る勿れ
アツい音に全て委ねてみたい
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