行ってらっしゃい!
玄関でうだうだする夫、アオキさんの覚悟が決まるのを待つ、というのは毎朝恒例の行事である。


いつもは1分もあれば諦めて出勤するのだが、今日は久々の休暇明けということで中々覚悟が決まらないらしい


アオキさんの覚悟が決まるのを待ちながら靴棚の上に飾ってある小さな時計をちらりと見遣ると時間が少し押していた。仕方がない、奥の手を出すか。


『アオキさん』
「はい、っ…?」


名をつむぎながら空を模したネクタイに手をかけ顔を引き寄せ、触れるだけの口付けをした。


『美味しいものを用意して待っていますからね』


少し崩れてしまったネクタイを直しながら言うとアオキさんに強く抱きしめられた


「……行きたくない」
『えっ!?そんなあ……』


どうやら余計行く気を削いでしまったらしい
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