▼【同じ景色も鏡越しに見える】
◇龍が如く(真島)ビルの屋上で女は神室町の夜景を見つめていた。屋上に上がってきた真島は女に気がつき、隣に立って彼女と同じ景色を見下ろした。
真島だったら、例え屋上の手すり近くにいたとしても、彼女が屋上に踏み込んだ瞬間に相手の気配に気がつくだろう。
だが、カタギである彼女は真島が隣に並んだ時にやっと気がついたのか、隣の彼を見て少し驚いたように目をぱちくりとさせた。
「気が付かなかった」
「そらな。自分もそう簡単に後ろ取られちゃあかんで」
「無茶言わないでよ…」
弱々しい声でそう言う彼女を茶化そうと、真島はにやりと笑う。
だが、神室町を見下ろすその横顔は何よりも真剣で、そして何よりも悲痛な表情していた。
真島の笑顔が消え、次に口に出そうとしていた言葉を忘れてしまって再び夜景を見下ろす。
極道の自分と、カタギの彼女。
「私は一般人なんだから」
同じ景色は最初から見えてはいなかったらしい。