※リクとスネイプで、結婚後、子供もいる設定。
小さい手に短い指。意味のある言葉は話せない口。
とてとてと少し歩いてはすぐに座り込む、頭ばっかり大きな、小さい身体。
「フェイン、少しの間、お願いしますねー」
『任せろ』
まだ発達する前の人間の形を、俺は可愛いとは思えない。
それでも、これがリクの子供だって言うんだから話は別だ。
リクとスネイプの子供。今はまだどちらに似てるとも言い難いが、リクに似てくれと心底思う。
リクは手を振って部屋を出る。蛇が子供の面倒を見るのもおかしな話だ。世間一般では悲鳴もんだが、リクもスネイプも俺に任せておけば大丈夫だと思っているようだった。蛇、冥利に尽きる。
「あー」
また意味のない単語を落として、チビは俺の身体を撫でた。
そこらに転がったおもちゃよりも、不規則に動く俺の方が興味あるようだ。
つかまり立ちは出来るといえども、まだ2、3歩しか歩けないし、このチビは動き回って暴れることもしない。
ホント手のかからないチビだこと(まぁ、俺には『手』はないけれど)。
リクはそんな子供らしかぬこのチビが心配で、そして可愛くて仕方がないらしく、スネイプそっちのけで構い倒している。
そのうち、嫉妬深いあの男が拗ねなきゃいいけれど。
1匹思想を重ねていると、チビが黙ってこっちを見ていた。子供なのに、黙っているコイツに少し違和感。
無口な所はスネイプに似ちゃったのかね。残念。
「ふぁ」
また伸びてきた手に溜息をつきながら好きにさせる。チビの音が続いた。
『へび』
『………ん?』
音が意味を持った気がして、首を上げる。
チビを見つめていると、それは不意ににこりと笑って俺に手を伸ばした。
『きみは、ふぇいん』
走った悪寒に思わず手から逃れ、距離を取る。チビは変わらず笑っていた。
話した。でも、問題はそこじゃなくて。
『おい、今…』
「はーい、戻りましたよー。
ありがとうございます、フェイン」
リクが呑気に笑いながら戻ってきた。チビがすぐにリクの方に四つ這いで近寄っていく。チビは父親のスネイプよりも母親のリクの事が大好きなのだ。
リクはチビを抱き上げて、次に俺を肩に乗せた。
そしてまた意味のない音を出すチビ。再び音が声になった。
「まま」
「……今」
リクの表情に驚きと喜びが満ちる。
子供を抱えたまま、リクは思わず小走りになった。
「先生! スネイプ先生!」
「…君はまた我輩をスネイプと呼ぶのかね」
地下牢教室に入ると呆れた表情のスネイプ。男と同じくスネイプ姓になっているリクは数瞬だけ反省して、すぐに表情を輝かせた。
「聞いてください。今、この子、ママって喋ったですよ!」
「……気の性では?」
「まま!」
「ほら!」
苦虫を潰したような顔をするスネイプの表情が、リクの腕の中にいるチビの手に触れて何かを催促するように待っていた。
が、チビはリクに顔を向けたまま笑顔を向けていた。
スネイプの肩が少し落ち、リクがそれを見て、苦笑を浮かべた。
「次はパパって呼んでくれますよ、きっと」
「……別に。期待してない」
拗ねたような声を出しながら、スネイプはリクの肩を軽く抱き寄せる。リクは幸せそうに微笑んだまま、優しくチビを抱えていた。
幸せいっぱいの3人の中、俺は1匹、無邪気に笑うチビを見つめ続けていた。
『……気の性、だよな』
気の性だと思いたい。だって『この言葉』を話せる人間はこの世界に限られているのだから。
この言葉を話せるのは、あの血筋しかいないはずなのだから。
にっこりと笑顔を向ける餓鬼が、今はもういない誰かに似ていて、酷く気分が悪かった。
そんなことはないと思っても、俺は可能性を完全には否定することはできない。
だって、俺が知る『あいつら』ならそれくらいは、どうにかして、やり遂げかねないのだから。