リクが出ていったあとの地下牢教室。
そこではスネイプは黙り込んだまま自身の手を不思議そうに見つめていた。

リドルの事を全て話したリクが泣き出した時、スネイプは不器用ながらにリクの頭を撫でたのだ。
(撫でたというよりは、頭を押さえ付けただけだが)

全く、リドルといい、スネイプといい…、慰めや優しさの表現が下手な奴ばかりだ。

でも、手がない俺には、そうやってリクの頭を撫でる事も出来ないし、少し羨ましくもなる。
絶対にそんなこと口には出さないが。

「………これだから…子供は…」
『仕方ないだろうが。怖かったんだろうし』

俺が返した言葉にスネイプはもちろん答えない。
言葉が伝わらないとは不便だ。

溜め息を零しつつ、マルフォイ父を追い掛けて行ったリクの帰りを待つ。
と、そこで校長のダンブルドアが地下牢教室に入ってきた。スネイプの怪訝そうな顔。

「セブルス。頼み事があるのじゃが」
「……………何なりと」

そう答えたスネイプに意外さも少し感じる。
相手が校長だからか。さすがに教師として逆らえはしないだろう。

「今年度もまたもや闇の魔術の防衛術の担当が辞めてしまった。
 来年からはリーマス・ルーピンを闇の魔術の防衛術の担当にしようと思う」

苦々しい表情のスネイプがダンブルドアの言葉でさらに苦くなった。
変わりに俺の表情は輝いた。

ルーピンはリクの保護者と聞く。そいつが先生となればリクも喜ぶ。
だがスネイプは歓迎している様子は全くない。

「……しかし、ルーピンは」
「暴れ柳は昔と変わらずある。そしてセブルスは脱狼薬を制作出来る数少ない有能者じゃ。
 問題はないじゃろう」

まだルーピンに会ったことはないが、リクの話からするに良い奴で、だからリクも慕ってる。
スネイプは何が不満なのか、頷いている様子はない。

まぁ、ダンブルドアは既に了承を得たと思っているようだが。

「今、Ms.ルーピンの様子を見るためにホグワーツに向かっておる。その時に頼もうと思っておる」
「彼が断ることを願いますな」
『万が一にもないから安心しろ』

シャシャと笑い声を上げた俺は中々来ないリクを見に行くために地下牢教室を抜け出した。

リク以外の奴の会話に必要以上の興味はない。


†††


「フェイン。こちらがリーマスさん。よろしくしてくださいね」

傷だらけの、でも優しそうに笑う男。それがルーピンの第一印象。

楽しそうなリクがいるから、まぁいいや。

こいつら、あっていきなり抱き締め会ってみたりして、俺の存在皆無。
というか、本当に親子というよりも恋人みたいなやつらだ。

「手紙でヘビを飼ってもいいかと聞かれた時は本当に驚いたよ」
『俺も人間に飼われるとは思ってなかった』

ヘビの俺を少しだけ警戒しながらも手を伸ばしてきたルーピンの、その傷だらけの指を舐めてやった。

こいつは狼男。本当に来年から教師をやれるんだか。

「リーマスさんの授業が楽しみです」
「リクちゃんは気が早いね」
「誰に似たのでしょう」
「うーん。…私かな」
「ですよね」

笑い合うこいつらは何なんだ。恋人か。リア充なのか!

ヘビながらに溜め息を付きながらも、リクが楽しそうなんで、もうなんだっていい。

「よろしく、フェイン。
 私がリクちゃんを見られない所はフェインにお願いするね」
『おう、まかせとけ』

言葉を返し、リクの肩に上がった俺をルーピンが微笑みながら見ていた。


†††


これが俺が生まれて1年間の話。リクが2年生の時の話。

いつも中心にはリクがいる。
これからも俺の中心はリクになるだろう。

それが嫌だとは思わないし、むしろ、それを望んでいる。

「フェイン、早くしないとバスに乗り遅れてしまいます!」
『いや、それリクがポッター達とぐずぐずしているからだし。俺悪くない』

鞄に俺を詰めて、走るリク。

バスに乗って、ルーピンの家に帰る予定だったリクは、時間を何度も確認しながらバス停に向かって走っていた。
だから、さっさと9と3/4番線を出れば良いのに、ポッター達と会話を弾ませて。

ほらほら、帰れなくなるぞ。急げ急げ。

バス停が見えて、そして乗るバスも少し向こうに見えて、リクの悲鳴が聞こえた。

洒落にならないぐらいに揺れる鞄の中で笑いながら、リクが一喜一憂しているのを楽しく思った。

これからも、俺の中心はリクになるだろう。

期待が溢れ、楽しくて、仕方がない。


(フェインの話。彼女は2年生)


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